短編小説

□この男、鈍感につき。
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ここ一年ですっかり日常の一部…というか、大半を占める様になったSOS団の活動。

今日も休日だと言うのに、健気にハルヒ団長様の命に従って、何時もの駅前北口に集合するSOS団団員一同。

俺が最後に着くのも規定事項となっており………

「おっそーいっ!キョン、遅刻よっ!」

「まだ集合時間の15分前だろう。」

「団長より遅い奴は皆遅刻なのっ!」

ハルヒの生き生きとした怒鳴り声と俺の怠そうな声。

この理不尽なやり取りも習慣化してきている。

「あのぅ……」

そして、ここで心配して下さるのが我らがエンジェル、朝比奈さんだ。

「すみませんね、朝比奈さん。待たせたでしょう?長門もな。」

「いえ、私もさっき来た所なので……。」

「………いい。」

このやり取りを見て対応の違いに苛ついたのか、ハルヒの口はアヒル状態だ。

そんなハルヒを見て苦笑するのが古泉。
お前は、笑う以外の表情が出来んのか。

古泉は、ハルヒの機嫌を少しでも良くする為にフォローを入れる。

「まぁまぁ、涼宮さん。彼は罰金を払って下さるのですし、いいじゃないですか。」

………こら、古泉。
市内探索の習慣化は甘んじて受け入れるが、罰金制度だけは習慣化させないで欲しい。

そうだ、何時も流される俺も俺だ。
たまには抗議してやろうじゃないか。

「なぁ、ハルヒ?罰金制度ってのも可笑しくないか?時間ってのは、金で返せるモンでも無いだろう?」

そうだ、だから罰金制度は廃止だ!!

と、胸を張り心の中で続けるが、ハルヒは違う意味で捉えたらしく。

「なるほどね。バカキョンもたまにはいい事言うじゃない。」

「そうだ、だからな…」

「時間は時間で返すって事ね……。うん、じゃあこうしましょ!」

ぱあっ、と表情を輝かせ、でかい瞳をキラキラさせている。良くない兆候だ。

「今日の午前中、私とデートしなさい!いい時間にしてくれなかったら死刑だから♪勿論、全部キョンの奢りでね!」

………は?
おいおいおいおい。
待て。さっきより酷い処罰ではないか?

「何よ、団長を待たせておいてこれ位当然じゃない!」

どんな理屈だよ。
まぁ、しかし、俺に非があるのも確かな訳で。

そこで俺は一つの事に気が付いた。

「解った、それで良い。しかしだな、ハルヒ。俺は4人を待たせちまったんだ。なのにお前だけに時間をやるのは変じゃないか?」

「ぁ…それじゃ、皆が順番に………」

「たったの15分の事でそんなに時間はやれないぞ?せめて、誰か一人って所だな。」

「ぅ……解ったわよ。」

少し納得出来ない様子のハルヒ。

しかし、これで少し希望の光が見えたな。

朝比奈さんとデート。
その可能性が、25%出来た。
長門を合わせて50%。

後は、運試しだな。

「で?ハルヒ。どうやって決めるんだ?」

ニヤニヤが止まらないね。
しかし、ハルヒはまたしても俺を困らせる。

「私が団長だから、私よね!ねっ!」

「全く、その通りかと。」

古泉も、爽やかスマイルで何俺の幸せの妨害をしようとしているんだ!

しかもお前、俺の意図をしっかりと理解してるだろ。その含み笑いを見れば一目瞭然だ。

しかし、どうにか切り返さなければ。

「は、ハルヒ?団員は、皆平等であるべきだと俺は思うのだが………」

「ま、まぁそれもそうね。じゃあ話し合いで決めるわ!」

話し合い、ね………。
恐らく3人は、ハルヒの機嫌を取ろうとするだろう。
大人しく諦めるか。

しかし、話し合いは意外は方向に進んでいた。

「私が行ってもいいかしら?」

「わっ、私もキョンくんと…その…っ、でででデートにっ、行きたいですぅっ!」

「………私も。」

「おやおや、僕も彼と親睦を深めたいのですが…。困ったものです。」

ど…どうリアクションして良いか解らん。

大体、何故ハルヒはこんな条件を望み、そして皆デートしたがるのだ?

あれか。俺の財布にたかる気か。
しかし、朝比奈さん達にそんな心があるとも思えない。

何なんだろうな?
誰か教えてくれ。

などと、一人でぼんやりと考えているとハルヒ達に話を振られた。

「ねぇ、キョン!」

「キョンくんが、私達の中から選んで下さいっ!」

「このままでは埒が空かないですし、ね。」

「あなたに任せる………。」

俺に選べと?

勿論朝比奈さん………なんて言える訳がない。

長門だって、ハルヒだって同じ位大切だ。

古泉だけ除外するのも、俺が女好きみたいで癪に障る。
谷口みたいに、女子に対して色物にはなれないしな。

俺が思い付いた決断は、一つ。

「ジャンケン、だ!」

それ、ジャ〜ンケ〜ンポ〜ン♪と歌ってやると、反射的に皆が手を出す。
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