短編小説
□心結び。
1ページ/2ページ
「あの、さ……」
「何よ………」
俺達の間には、初々しいカップルみたいな、何故かそんな気まずさが漂っていた。
何時もの放課後の帰り道。
本来ならSOS団5人組で下校の道を辿っている所だが、今日は何故か2人だけなのだ。
何故、何故だ。
何故こんな状況下に陥って、そしてこんな空気を漂わせているんだ。
実の所はよく解らないが、多分これは朝比奈さんに古泉、そして長門に仕組まれた物だと思う。
長門はハルヒに何か吹き込んでいた、そして長門をわざとらしく連れ出す朝比奈さん。
古泉は、俺にいらん事を言ってから、バイトが入っただとか、まぁそんな何時もの言い訳を言いながら帰って行った。
そして、この状況は生まれる。
何故だ、何故俺は何時もの様に振る舞えない。
きっと、アレだ。
古泉とあんな会話を交わした所為だ。
―――涼宮さんは、あなたが好きなんですよ。
また、突拍子もない事を―――
―――じゃあ、試してみて下さい。例えば二人きりで………
手でも繋いでみれば、解りますよ。
畜生、古泉め。
変な事言いやがって。
おかげで、変に意識しちまうじゃねぇか。
ハルヒの様子も変だ。
どこと無く上の空だったり、急にそわそわしたり。
………試して、みるか?
一瞬そんな事が脳裏に過ぎるが、すぐにその思考を追い払う。
止めておこう。そんなガラじゃない。
それに、奴らの策略にハマるのもなんか癪だ。
そう思った時だった。
指先に、微かな感覚。
ちょん、と触れたハルヒの指先。
これが何を意味しているのか解らない程鈍感でも無い。
「あの、さ……」
「だから、何よ……。」
「……手、繋ぐか?」
「……ん。」
繋いでみたら、ハルヒの手は熱くて。
同じ位、俺の手も熱くて。
じわり、と伝わってくる体温に、ハルヒの心の内まで含まれてる気がした。
俺の自惚れじゃなければ、な。
そして俺の心情もきっと伝わってる。
心が結ばれる錯覚を感じた。