短編小説

□心結び。
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「あの、さ……」

「何よ………」


俺達の間には、初々しいカップルみたいな、何故かそんな気まずさが漂っていた。

何時もの放課後の帰り道。

本来ならSOS団5人組で下校の道を辿っている所だが、今日は何故か2人だけなのだ。

何故、何故だ。

何故こんな状況下に陥って、そしてこんな空気を漂わせているんだ。

実の所はよく解らないが、多分これは朝比奈さんに古泉、そして長門に仕組まれた物だと思う。

長門はハルヒに何か吹き込んでいた、そして長門をわざとらしく連れ出す朝比奈さん。

古泉は、俺にいらん事を言ってから、バイトが入っただとか、まぁそんな何時もの言い訳を言いながら帰って行った。

そして、この状況は生まれる。

何故だ、何故俺は何時もの様に振る舞えない。

きっと、アレだ。
古泉とあんな会話を交わした所為だ。

―――涼宮さんは、あなたが好きなんですよ。

また、突拍子もない事を―――

―――じゃあ、試してみて下さい。例えば二人きりで………


手でも繋いでみれば、解りますよ。


畜生、古泉め。
変な事言いやがって。

おかげで、変に意識しちまうじゃねぇか。

ハルヒの様子も変だ。
どこと無く上の空だったり、急にそわそわしたり。


………試して、みるか?


一瞬そんな事が脳裏に過ぎるが、すぐにその思考を追い払う。

止めておこう。そんなガラじゃない。

それに、奴らの策略にハマるのもなんか癪だ。


そう思った時だった。

指先に、微かな感覚。

ちょん、と触れたハルヒの指先。

これが何を意味しているのか解らない程鈍感でも無い。

「あの、さ……」

「だから、何よ……。」

「……手、繋ぐか?」

「……ん。」

繋いでみたら、ハルヒの手は熱くて。
同じ位、俺の手も熱くて。

じわり、と伝わってくる体温に、ハルヒの心の内まで含まれてる気がした。

俺の自惚れじゃなければ、な。

そして俺の心情もきっと伝わってる。

心が結ばれる錯覚を感じた。
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