短編小説
□ベリー・ベリー・ストロベリー
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日曜日の午後、俺はふらふらと街を歩いていた。
本日はSOS団の活動もなく(市内探索は昨日だった)暇を持て余していた俺はなんとなーく外に出たのだが、特にこれといってする事もない。
行き場に困った俺は、とりあえず時間潰しは出来るだろうと考え某大型ショッピングセンターに入る。
暫くぶらぶらしてみたが、やはり用事もなかったのですぐに暇になってしまった。
ジュースでも飲むか、と思い食事所や喫茶店等が並ぶコーナーへと足を運んでみる。
「……んん?」
アイスショップの入り口で一人突っ立ってる女の子。
それは、俺の一番よく知ってる奴に間違いなかった。
「何してんだ?あいつ……。」
暫く様子を窺ってみたのだが、ハルヒは一向に動く気配がない。
ただ、入り口近くに貼られたポスターを睨み付けたまま唸っている。
そんな団長様の様子を窺うのも楽しくない訳ではないのだが、ハルヒはなにか困っているのかも知れない。現に今だって唸りっぱなしだ。
放っておくのもなんだかなあ、という感じだったので背後にそ〜っと忍び寄る。
「わっ!!」
「きゃあっ!?」
驚かしたのは、サプライズというか、ちょっぴりの好奇心というか、まあそんな所だ。
期待通りハルヒはびっくりした様で、可愛らしい声をあげた。
通行人がくすくす笑いながらこっちを見ている。
「……なによ、バカキョンじゃないの。」
バカとは何だ、バカとは。
まぁ、こんなガキっぽい事をした後じゃ、否定の言葉を並べる事が出来ないのだが。
「まあ、それはいいとして、ハルヒさん。」
「な、何よ?」
「こんな所で、何突っ立ってんだ?」
う、とハルヒは言葉につまる。
「何……って、アイス屋さんなんだから、アイス食べにきたに決まってるでしょ?」
「一人でか?しかも、ずっと店の中に入ろうとしなかったしなあ?」
「……あんた、見てたの?」
「暫くな。で、何してんだ?」
「…………。」
「……………ハルヒ?」
てっきりあんたには関係ないでしょ、バカっ!とか言われると思っていたのに、何だ、このリアクションは。
長門との間に生まれる沈黙ならばそんなに苦にはならないのだが、ハルヒは普段がアレなだけに調子が狂う。
「あの、ね、キョン……。」
沈黙を破り、躊躇いがちに何かを告げようとするハルヒ。
しかし。
「ヘーイお二人さん!!」
『た……谷口ぃっ!?』
アホ……もとい谷口が俺達の前に現れた。
全く、こいつは何時も何でこうタイミングが悪いんだ。
「なんだなんだぁ?デートかよお前ら?」
「断じて違う。お前こそ何……って、その恰好は……。」
谷口が身に纏っているのは、アイスショップの店員が着る筈の制服だった。
「バイトしてんだよ、ここで。と、いう訳で寄ってけ!」
俺はハルヒの方に目をやる。
「……どうする?ハルヒ。」
「……行く。」
言葉こそ素っ気無かったが、嬉しそうな表情は隠せていないハルヒ。
頬が緩んじまってるぞ。……人の事言えたもんじゃないが。