短編小説

□ゆびきりCloveR
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爽やかスマイルがデフォとなっている微笑みくん、古泉が珍しく憂鬱な表情をしている。ふう、と溜息をつくのも様になっていてクラスの女子共がこんな所を見たら影があっていいだの何だのときゃいきゃい騒ぎ出しそうな物だが、生憎俺はそんな感性を持ち合わせちゃあいない。
放課後の屋上で、憂鬱色を漂わせた奴と二人きり。気まずさもあるが、何より放っておけなかったのでどうしたんだ、と声を掛けてやる。
すると、それを待っていたかの様に――いや、実際待っていたんだろう――奴は直ぐに口を開いた。
「ここ最近の閉鎖空間は、今までの物とは全く異なった世界なのです。」
「と、言うと?」
「今までの物は世界が灰色に染まった空間……あなたもご覧になった事があるから解りますね?しかし、最近の閉鎖空間はとてものどかな…まるで、春を象徴した様な空間。神人を見かける事もありません。」
よかったじゃないか。神人がいないなら、世界崩壊の危機とやらも訪れないだろう?
「よくないですよ。今までは神人を倒す、という手段で解決する事が出来た。しかし、今は解決する術も解らず閉鎖空間は拡大を続ける一方なのです。」
早く何とかしなければ僕達の世界と閉鎖空間が入れ代わってしまう事も考えられます……などと深刻に言われても、解決策が特に浮かばない俺は一緒にうーんと唸るしかない。
「今回も、やはり鍵となるのはあなたなのでしょうが……。」
またそれか。
「まぁ、その内新しいタイプの閉鎖空間……“新閉鎖空間”とでも呼びましょうか、それがあなたのお目にかかる事もあるでしょう。その時は、」
あなたに全てお任せします、などと楽しげに古泉は微笑んだ。
……うん、その表情の方がお前らしくていいとは思うんだけどな?憂鬱の種を全て俺に託すような台詞は訂正して下さいコノヤロウ。
まぁ、いざとなれば俺だって協力するさ。
なんて、ぼんやり考えながら空を眺める。
空は、晴れ晴れとしていた。まるで、ハルヒの輝く笑顔のように。
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