短編小説

□喜緑江美里の分際
1ページ/7ページ

私は情報統合思念体によって作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースであり、涼宮さんを観察する役割を持つ長門さんのバックアップの一人にすぎない。

感情なんて持ってはいけない。
それは仕事の邪魔にしかならないから。

現に、同僚の一人である朝倉さんは、この現状を変えたいという強い思いのせいで情報結合を解除された。

でも、彼女はある意味立派だと思う。
自分の身をかけてでも、統合思念体の為に働こうとしたのだから。

私は、それさえ出来ていない。

私は“人”ではない。
私は統合思念体によって生かされている。

だから…

感情なんて人間じみていて、個人的な物は持ってはいけないんだ。
勿論、恋なんて以っての外。

なのに、私はあるまじき行動をとった。

あのお方―――キョンくんと、手を繋いだのだ。
大好きだったから。

でも、もうその感情さえ統合思念体に奪われてしまった。

仕方がない。
私が悪いんだ。

恋心、なんてモノを抱いた私が。

喜緑江美里の分際で、多くの物を願ってはいけない。
…いいえ、何も願ってはいけない筈なんです。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ