短編小説
□くじらじまの憂鬱。
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海の向こう、遥か遠くに見える島。
くじらのカタチをした島。
俺達はくじらじまと呼んでいた。
しかし。
数年経ってから来てみると、意外にもそうは見えなかったのだ。
それは、想像というフィルターがかかってたからこそそう見えた物であり、純粋な想像力を失った大人にはそうは見えないのだ。
つまり、俺も大人になったって訳か。
大人になるにあたって、大切な物を幾つも失う。
嫌だとは思うが、まぁ、そんなモンだろ、とも思う。
少し淋しいけれど…
「キョンくん、キョンくんっ!あれ!くじらみたいだよね!」
いつかは知るんだ。
あれは、くじらなんかじゃない。
「ああ、くじらみたいだな…。」
…はて?
“くじらじま”と名付けたのは誰だったか。