短編小説
□かみさまがくれたもの
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「それからは、恐怖の連続でしたよ。何でこんな思いをしなければならないのか、と憤慨に堪えませんでした。」
「へえ……」
機関の話が珍しいのか、それとも僕が自分の事を沢山喋るのが珍しいのか、少し驚いた顔で話を聞いていた。
「でも、お前は“非日常”ってヤツに憧れていたんだろう?」
「確かにそうでした。……しかし、実際に遭遇するのは訳が違います。死の恐怖も味わいましたし。」
確かにな……と彼は呟く。
朝倉涼子という元クラスメートの事を思い出しているのだろうか。
「誰の陰謀で、こんな目に遭ってるんだ……ってね。初めて彼女の存在を認識した時は、恨みすら感じましたよ。」
「……それは、今もか?」
「さあ、どうでしょう?」
はぐらかして微笑んで見せる。
彼も珍しく笑ってくれた。
無力な僕は、何時も取り繕うだけの笑顔で弱さを隠していた。
それ以外の表情なんか、三年前から僕は知らなかったんだ。
でも、涼宮さん達や彼と出会ってから、少しずつだけれど変わっていった気がする。
今だって、心から笑えるから。
「ふふっ……」
「あら……古泉くん、笑顔が柔らかくなったわね?」
帰り道で、涼宮さんに指摘された。鋭い方だ。
僕は、何度もこの力を恨んだけれど。神すらも憎んだけれど。
全て、あなたからの贈りものだったんだ。
非日常的な日常も。
こんな、楽しい瞬間を共有できる仲間も。
ぜんぶ。
「……ありがとう、ございます。」
あなた達と出逢えた奇跡が、僕を強くさせる。
ああ、『神様』。大嫌いだなんていってごめんなさい。
あなたがくれたものは、かけがえのない大切なものだったのに。
そう。あなたからの贈り物は。
大切な、“友達”。
fin.