短編小説
□喜緑江美里の分際
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あれ、待って?
さっきの言葉―――
「会長、それって、私を女の子として意識してくれている…って事で、期待していいんですか?」
会長はまるで表情を隠すかの様に手で顔を覆っている。
ふふ。全然隠れてないんですけどね。
会長は視線を泳がせながら、
「う、あ、ま…まぁ、そういう事…だ…。」
私は会長にそんな風に思って貰えているのが嬉しくて、つい「ふふ」と声に出して笑ってしまう。
会長はそれをどう取ったのか、
「こら!人が一生懸命言ってるのに笑うな!ったく…」
なんて言っている。
違いますよ。会長が私の事をそんな風に思ってくれているのが嬉しかっただけです。
そう会長の耳元で囁いて、左の頬に軽くキスをした。
てへっ、と舌を出し、
「やっちゃいました♪」
と、悪戯っぽく笑う。
すると会長は、反撃だと言わんばかりに強い力で私を抱き寄せ、おでこにキスをくれる。
「会長…。」
「江美里…。」
口付けを交わそうとした、その時。
『えー、下校の時間が過ぎました。まだ校内に残っている生徒会長さんと書記さんは速やかに下校しましょう。ふふっ。』
『おい、古泉。お前、お楽しみの所邪魔しちゃ悪いだろ。』
『でも、このまま放っておくのも、風紀上いかがなものかと。』
『あのなぁ、何もこんなやり方しなくてもだなぁ…って!マイク入ったままだぞ!古泉!!』
『はは、切るのを忘れていました。(ぶちっ)』
…………。
いつの間に見られていたのでしょう。
「ちっ、古泉め。」
会長はそう漏らしてから、
「帰るか。…送ってくぞ。」
と、言ってくれた。