短編小説

□古泉一樹の作戦
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4人は5分も経たない内に戻って来た。
そして、ハルヒが発した一言。これほどショックを受けた言葉は他に一つしか存在しないね。
ほら、自己紹介のアレだ。

「私、古泉くんと付き合おうと思ってるのよね!……キョンは、どう思う?」

俺は古泉の表情を伺う。
すると奴は勝ち誇った様にんっふと笑っている。畜生め。

次に朝比奈さんの困り顔を確認し、最後に長門に目をやる。

すると長門は、本当に僅かな動きだが、確かに頷いた。
俺にはそれが“大丈夫”という合図に見えて、少しだけほっとする。

そして俺はハルヒの質問に答える。

「それは……ハルヒが決める事だ。」

「そうじゃなくて!その事を聞いてあんたはどう思うの?何か思う事とか言いたい事とかないの?!」

いつになく真剣な表情で必死に訴えて来るハルヒ。

流石の俺でもこれには気付くさ。
ハルヒは、俺に反対して欲しいんだ。……自惚れじゃなければ、だが。

俺はハルヒの両肩を掴み、向き合って言う。

「ハルヒが本気で古泉と付き合うってんなら、俺はもう何も言えない。でもな……俺は……」

変な汗が頬を伝う。
でもな、伝えなきゃならない事だ。
でなきゃ、きっと後で後悔する。

ほら、誰だったか言ってただろ?
やらないで後悔するよりやって後悔した方がいい、ってさ。

すう、と空気を吸ってから言う。

「ハルヒ…お前が好きなんだ!古泉にも負けねぇ。」

「……!?」

「さっきお前と古泉が付き合うって聞いた時、俺はもの凄く嫌だったんだ!お前を古泉に渡したくない……」

「キ、キョン……?」

「俺がお前を幸せにするから…だから、俺と付き合って下さい!」

ハルヒは、間抜け面でぽかんとこちらを見ている。

ああ、こんな姿まで可愛いと感じてしまう俺の精神は、もうハルヒによって毒されているのだろうか。

「え…キョン…?今、何て…?」

「だから、ハルヒ……お前が好きだと言ったんだ!」

「え…うそ…っ」

「ハルヒ……答え、聞かせてくれるか?」

しかしハルヒは中々言い出せないらしい。
下を向いてもじもじとしている。

……まぁ、恥ずかしいんだろうな。実際、俺だって今まで告白するのにどれだけ躊躇った事か。
だから、ハルヒが言い出すまで待っているさ。

しかし、それを待てない男がいた!そう、奴の名は古泉一樹!

「涼宮さん!折角ここまで状況を持って来たのですから、素直になって下さい!……でないと、僕が、」

僕がキョンくんを取ってしまいますよ?

その次の瞬間、俺の腕は古泉に掴まれる。
長門は、先程までいつもの席に座っていたのだが、がたんと立ち上がる。

そして長門が止めに入るが、それは少し遅く、古泉は俺の頬に……その、キスしやがった。

「な…っ!何をっ!?」

これは俺の声ではない。俺の脳は完全にフリーズしていたからな。
そう、これはハルヒの声だ。

「古泉くん!いくら古泉くんでもキョンだけは渡さないんだから!キョンの事を一番好きなのは私、涼宮ハルヒよっ!!」

さっきまで恥ずかしがっていたのが嘘のように、恥ずかしい事を大声で叫んでいた。

ハルヒ…、それって……

「両想いってヤツか?」

「……うん。そうみたいね。」
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