短編小説
□平凡?いいじゃないかっ!
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「で、その悩みってのは何なんだい?」
「あの…上手く言えないんですけど…」
何の取り柄も無い平凡な俺。
そんな俺は、朝比奈さんや長門、古泉にハルヒ。
一緒に居る事自体、お門違いもいい所ではないのか?
そんな事を考えちまったんだ。
で、一度覚えた疑惑は何処までも着いて来る。
皆は、俺の事を涼宮ハルヒの“鍵”だと言う。
だが、鍵なんて、いくらでも代わりが作れるだろう?
俺じゃなければ駄目なんて事は無い。
じゃあ、俺って何だ?
宇宙人でも未来人でも超能力者でも無い俺は、何故SOS団に居るんだ?
自分の存在意義ってヤツに疑問を覚えちまったんだ。
こんな事、相談できる人はいないしな。
しかし、自分一人で考えてもドツボにはまるだけだ。
そこで現れたのが鶴屋さん。
このお方なら、解決方を知っているのかも知れない。
所々話をぼかしつつ、言える範囲での全てを話した。
「へぇ〜、ふぅ〜ん♪キョンくんも中々可愛いっさね〜。」
鶴屋さんの第一声はこれだった。
「あの…鶴屋さん?」
「キョンくん、平凡の何がいけないんだいっ?」
何が…って言われると、よく分からないのですが。
「確かにハルにゃんは面白いっさ〜。みくる達も…あぁっと、これ以上は禁則事項っさ〜。」
…本当、あなたは何処まで知っているのやら。
鶴屋さんはにかっと笑う。
「キョンくんは平凡なのかい?私にはそうは見えないけどな〜。」
そうですか?
「うんうんっ。でも、まぁハルにゃん達と比べると普通っさね〜。でも、平凡でいいじゃないかっ!」
それに、と鶴屋さんは続ける。
「ハルにゃん達と居たら、逆にキョンくんの方が普通じゃないっさ〜。」
確かに。
異常が平凡と化している。
逆に、俺の方が少数派であるのだから、SOS団の間では普通ではないのかも知れないな。
でも、俺じゃなくてもいいじゃないのか?
「ほ〜んと、キョンくんは可愛いっさ〜♪でも、お姉さんから言わせてもらうと、もう少し気付いて欲しいのさっ。」
何に、ですか?
「皆、キョンくんがめがっさ好きなのさ〜。もちろん私もねっ。だから、代わりなんて無理な話っさ〜。」
鶴屋さん…。
「平凡でもいいじゃないかっ!キョンくんはキョンくんなんだしさっ!」
…そうですね。
俺は俺なんだ。
そして、大好きな奴らに必要な存在とされている。
平凡?
それもまたいいじゃないか。
それは俺の個性なのだから。
皆が俺を必要としてくれるのなら、好きだと言ってくれるのなら。
平凡な俺もまだまだ捨てた物じゃない。
そう思えるんだ。
平凡?それでいいじゃないか。
俺は俺なんだから。