L
□カフェイン
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ね、ねむい…!
捜査本部は、朝から皆さんお忙しい。
もちろん私も忙しい、はずなんだけれども。
リズミカルなパソコンのキーを叩く音、ボソボソと遠くに聞こえる話し声、暑くもなく寒くもない完璧な空調、眩しい太陽を薄いカーテンに遮断されて、ほんのりと薄暗いこの部屋…そのすべてが、私を暗くて深ーい眠りの世界に誘うのよ。
このところ残業続きで、結構疲れてた。それが昨日は珍しく早く片付いて、久しぶりに日付を跨がないうちに寝られる、と思ったのに
Lが私の部屋に来てくれて
…結局、眠ったのは日付を跨いでからだった。というより、もう空の色が変わり始めていたような気も…。
だから今日は、必要以上に足を組み替えてみたり、何度も天井を仰いでみたり、それなりの努力をしながら、こうして画面に向かっているんだけど…。
はっと気付くと、眼前が真っ暗になった後だったりする。
それなのにL(今は竜崎だけど)は
「コーヒーを下さい」
って、私をこき使う。
Lだって私と同じように、いや、私よりも絶対に疲れてるはずなのに、全くそんな素振りは見せない。
どれだけタフなんだろ。
…それはさておき、うん、確かに立ち上がるとその時は目が覚めるのよ。
私はコーヒーが好きじゃないから飲まないけど、ふわっと漂うこの苦い香りは好き。そのコーヒーに角砂糖をボチャボチャ入れて、じわじわと焦げ茶色が染み込んでいくのを見るのはもっと好き。
味は想像したくない。
きっと破滅的に甘いそのコーヒーをLに持って行って
「ありがとうございます」
って、ちょこっと笑って言われるときが、一番好き。
誰も知らない小さな笑顔に、よし、やるかー!と、いつもはなるんだけど、もちろん今日もなったんだけど、…今日はそのパワーが続かない。再度向き合った画面は、また睡魔によってぼわーんと霞む。
ああ、パソコンのキーを叩く音が心地よいBGMに聞こえる…。
「コーヒーを下さい」
…えぇ?
また!?
今日はこれで4回目だよ!?いつもはこんなに飲まないのに。胃が痛くなったりしないのかしら。
―もしかして、私がこっそり船を漕いでるの…バレてる?
暗に寝るなよって言われてるのかしら。ちゃんと仕事しろって。
って、誰のせいだと思ってるのよ。いくら久しぶりだからって、あんな激しく何回もされたら、まともに眠れないに決まってるでしょ??
なぁんて言えるわけもなく、私は4杯目の激甘悶絶コーヒーを入れるために、また席を立った。