「もういい!こんな家出て行ってやる!」
「あぁそうかい。こっちもオメェみてぇな餓鬼が居なくなってくれると大助かりだよ。」
…もう、知らない!
〜家出ブルース〜
盛大な男を立て、見慣れた町を家とは反対方向に歩いて…いや、踏みしめて行く。
もう下駄が割れそうな勢いで。
粋の街、江戸
なんて云う大人も居るが、こんな街、只の塵共の巣だ。
もう大人なんかこりごり!
一輝(いっき)はその足のまま、近くの川原へ向かった。
「あぁもう!何が仕事だよ!大人はいつもそうだ!
仕事仕事仕事!
いつも仕事で言い訳する!
しかもなんだ!
仕事ってただ布団で一緒に寝ているだけじゃないか!
あれが仕事なら、俺だって出来るじゃんか。」
…一輝の家は遊郭屋。
一輝の母はまだ幼い一輝に仕事の内容を知らせていない。
それは、まだ内容を理解出来ない、いや、して欲しくなかったから。
そんなある日。
「母ちゃん、母ちゃん!」
母からいつも言って聞かされていた事。
「いいかい、決して二階より上には行くんじゃないよ。」
だが一輝は母恋しさにその禁忌を破ったのだ。