神動四戦記

□一章
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「いやー、やはり、麗将軍の剣さばきには惚れ惚れいたしますなー!」

長い城内の廊下を麗伯と洵法は歩きながら言葉を交わしていた。

「いや、俺はただ兵達を育てる為にやっているだけだし…。しかも、鍛練に遅刻する将軍って、普通は格下げだろ。」

笑いながら麗伯は洵法へと返答する。
と、向こうに見える二つの影を見、二人は足を止めた。
彼らの見る先には、長髪で優しい目をしている人物が一人、女官と話している。

「斗陰(トイン)!」

麗伯はその長髪の人物に、何処か嬉さを含んだ声で話し掛けた。
斗陰がその声に振り返ると、麗伯は直ぐさま駆け寄った。

「鍛練が終わったんなら、一杯し「いけません!」

斗陰の横にいた女官がいきなり、声を張り上げた。
突然の展開に洵法と麗伯は口を開けないでいると、彼女から声があがった。

「斗陰様はまだ仕事があるんです。麗伯様のご勝手で、このお方の筆をとる手を止めさせないでください。」

まだ若い彼女は女官などでは無く、正式な軍師であり、洵法の後輩にあたる。
名を授春(ジュシュン)と言う。

「これ。授春、少し口を慎みなされ。麗将軍と斗将軍の仲を知らぬお前が、知れたような口をたたくでない。」

さすがの洵法も『いかん。』と思ってか、授春に一喝をいれた。
と言うもの、そこまで心が狭い訳ではない麗伯はニコリと笑顔を洵法に向けた。

「別に構わないさ。俺はこの女軍師さんに本当の事を言われたまでだし。」
「確かに…。授春の正解でもある。私達が幼馴染みであろうと、仕事とは別物だ。」
ようやく口を開いた斗陰。
授春をかばうか、麗伯をとるか、微妙な位置で二人の器量を伺う。

「そろそろ、軍議の刻にも近く…。この際、斗将軍もご一緒に参りましょう。」

展開の末が見えない内容に洵法がやんわりと終止符を打った。
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