神動四戦記

□一章
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『俺と斗陰は幼馴染みか…。』

麗伯は軍議の間、胸中呟いた。
彼なりに違和感を抱いていた。
"幼馴染み"に。

『幼馴染みっちゃあ…そうだけど…。』
『麗将軍!』

小声で麗伯を呼ぶ洵法。
どうしたことか。と顔を上げると、軍議に陳列する者達が麗伯をじっと見据えていた。

『軍務の報告と、兵糧費等の報告を!』

小声ながら必死に言う洵法。
それを見、ようやく麗伯は軍議の席だったのだと思い出した。

「麗伯、お前だ。」

台座に堂々と座る男が言った。
名を琥北(コウホク)といい、麗伯達、国の最高権利者である。

「えーと…特にありません。」
「そうか。では次。」



軍議を終え、会議室を出た麗伯へすかさず洵法が話かけてきた。

「いったいどうした事ですか!?会議中にぼけーっとするなどと!」

それを軽く無視して麗伯は自室へと歩く出した。
なんだかいつもと違う彼の態度に、洵法は心配になりながらも静かに後を追った。


「居眠り将軍。」

麗伯が部屋の扉へと手をかけた時だった。
ふと、ある声が耳をくすぐった。
振り返ると渡り廊下の手すりに腰かける少年が一人、笑いながらこちらを見ている。
「白峻(ハクスン)…。」

白峻とは名前の通りか、白髪で、歳はほんの十五程の少年である。が、彼も麗伯と同じ立派な武将の一人だ。

「会議中は緊張感もたないとさぁー。そんなんじゃあ戦場でも負けちゃうよ?」

何を一人前に言い出すか…。

『まだひよっこのくせに…。』

麗伯は心で呟いた。
洵法は少し困り顔で二人を見ている。
麗伯は無視しようと自室を開ける。
すると白峻が再び口を開いた。

「……"鬼殺し"って?」

少年らしく、わざと可愛らしく聞く白峻。
だが、顔は笑っている。
まるでその質問の結論を知っているように。

次の瞬間、鋭い刃が立ち尽くす洵法の目の前を通り、白峻を目掛け駆けていった。
彼はそれを自分の剣で受け止めた。

「荒っぽいのはいけないなぁー。」

フフッ、と笑う白峻は飛び掛かって来た麗伯の剣を自分から弾き背けた。

いったい大幅に身長も、体格も違う相手とどうやったら対等にやり合えるのだろうか…。

洵法はそんな事を考えていたが、ハッと気が付くと、麗伯を止めに入った。

「いけませんっ麗将軍!」

洵法が麗伯を後ろから押さえると、白峻は剣を鞘にしまった。

「それではお二人さん。また会おうよ。」
そう言うと、ヘラヘラと振り向きざまに手を振り、廊下を去っていった。
麗伯は自分を押さえる洵法の手を払うと、乱暴に剣をしまい、自室へと入っていってしまった。
洵法は目を床に落としながら、寂しそうに廊下を歩き、軍務室へと向かった。
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