神動四戦記

□一章
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「起きてください。」

幕舎の朝。
ある部屋では、必ず女官の一声から始まる。
「あと…三…五分だ…け…」

女官の起こすは部屋の主であろう。
敷布ごと布団を深く被ると、また眠りに入ってしまった。

「もう…。」

呆れた声で言うと女官は部屋を出て行った。
が、暫くして戻ってきた彼女の手には木製の盥がしっかりと握られていた。
次の瞬間、彼女はその中に並々と入っていた水を、眠りこける人物に向かって殴りかけた。

「…。ッつっめてぇ!」

ワンテンポ遅れてから、自身を包んでいた布団を投げ飛ばし、主は勢い良く起き上がった。

「何時だと思ってるんですかっ!とっくに鍛練の刻は過ぎてるんですよ!?」

主は頭をかきながら、いまだに夢心地な様子で怒鳴る女官を見上げた。

「んな事言われたって…俺だって毎日毎日、疲れてるんだしさぁ…」
「問答無用です!さっ、着替えて今日も兵達を鍛えてあげて下さい!」

はいはい。といい加減に返事をすると、主は顔を洗いに外へと出て行った。
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