神動四戦記

□二章
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弓矢は古い昔からある兵法の一つである。
その矢先に毒を塗ったのが毒矢戦法。
子象一頭を即死させるほどの威力を備わった物もあったとか。


「どうも意識が戻らないとの事です…。」
斗陰の容態は一向に良くなる様子は無い。
そんな知らせが麗伯のもとにも届いた。
その報告を伝えるべく、洵法は彼の部屋にいた。
麗伯は壁に空いた窓から空を見上げた。
季節的にはそぐわないような、薄暗い空色である。

「まさか毒矢だったとは…。」

洵法は悔しそうな、寂しそうな表情で続けた。
ちらりと麗伯の様子を伺うが、彼は目を合わせようとはしない。

「…見舞い。行ってくる。」

唐突に彼は言った。
が、洵法は流石長い間、麗伯と共に過ごしてきただけあって驚きもせずに頷いた。
柔らかい笑顔で。

ふと何かに気付いた洵法が問うた。

「頬の傷…」

麗伯の頬についた跡が気になるようで、彼を呼び止めた。

「戦場でつけたものとは異なるような…と。」
「見間違いだろ。」

麗伯は洵法を見つめ笑う。

「だと良いのですが…。」

傷を見、につい最近ついたのでは無いと感じ取ったようで、洵法は話し掛けたようだ。
が自分の将軍に言われては、深入りは出来まい。
洵法は口をつぐんだ。
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