神動四戦記

□三章
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「西国は南国によって落とされたも同然。ここは北国に圧力をかけておくのが良い策ではないかと。」

長い髪を一つに纏めあげ、巾着で包んだ男は深々と頭を下げながら言った。

「…。」

台座の上で足を組み、沈黙しているは琥北である。
彼の顔にはうっすらとだが、年相応の皺が目立ち始めていた。
頭を上げたのは祝融であったが、また彼も目尻に年が出て来た。


西国との一戦を交えてから、しばし平穏な日が経っていた。
おかげで大分、戦力は蓄えられ、凶作にもみまわれなかったためか、兵糧も余るほどにある。
そして今が他国を踏み倒すべく動こうか、という絶好の時期なのだ。

「西国を倒す事によって南国は多量の土地と兵を手に入れる。さすれば、こちらに不利ではないか?」

琥北は細心の注意をはらうように祝触に問うた。

「まぁ…。」

顎に手を添えながら、祝触は考え込んでしまった。
琥北は体を前屈みにし、祝触の心境を聞くため、じっと静かに見つめていた。
が、中々判断がつかないとみたらしく、わざとらしく咳払いをした。

やっとのことで祝触は顔を上げた。

「殿の言う通りやもしれません。…二軍を纏めて捕りましょう。」

晴れやかな表情で琥北を見る。
琥北はにやりと口元を緩め笑った。
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