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□下手な嘘
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「獄寺くん、もしかして怒ってる?』

「怒ってなんて、ないッスよ?」


獄寺くんの…嘘つき。

さっきから、眉間にシワ入りっぱなしだよ?



怒ってる原因は、分かってる

オレがさっき山本と話してたからだ。



「さっきオレが山本と…話してた、から?」

「っ、…何でもないって、言ったでしょう?」


獄寺くんは嘘がつけない

強がっててもすぐにわかるのに。



オレは、そんな獄寺くんに

沸々とイタズラ心が湧いてくる。


「あ、そう。じゃ、今日は山本と一緒に帰ろうかな?」

「えっ?!……なんで、そんなこと…言うんスか?」


あ……泣きそうな顔、してる。


オレのちょっとしたイタズラで

今にも泣き出しそうな顔の獄寺くんを見て

オレまでつらくなってしまった。


「そんなこと…言わないで、ください…」

そう言うと

獄寺くんはオレの体をギュッと抱き締めた。

「…山本に、あんな無防備な顔……しないで、ください…」

「え……?」

「さっき、山本と話してた時…十代目、すっげー楽しそうで…あんな、顔…するんだなぁ…って、オレ…」


ああ、そうか

獄寺くんは


「…嫉妬、してくれてたんだね?」

「はい…」



『…大好きだよ。』

小さく小さく呟いたはずなのに

獄寺君の耳には届いていたみたいで。


さっきよりも強く抱き締められて

ちょっとだけ苦しい。

「獄寺く、ん…ちょ、っ…!」


抗議しようと顔を上げると

今まで見たことのない様な笑顔があって

オレの胸がトクンと鳴った。


そして、オレはおずおずと獄寺君の背に手を回した。

「十代目?!」


「さっきの顔、…誰にも見せないでね?」

「……っ、はい!十代目限定です!!」




オレ達は2人で顔を見合わせ

とびっきりの笑顔で笑いあった。







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