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□冬のコーヒー
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「獄寺君はコーヒーを砂糖無しで飲める?」
「へ?まあ、一応飲めますけど」
若干肌寒くなった季節の自販機の前にツナと獄寺が立っていた。
「じゃあ、これ飲んでくれない?間違って無糖買っちゃってさ」
そう言ってツナが渡したのは、どこぞのオジサンがメインの某コーヒー。
「はい!喜んで」
獄寺はツナから無糖コーヒーを受け取ると、指輪がついた指で、開け、それに口をつける。
それがどことなく色気を誘って、ツナはそれから目を反らせない。
「十代目……?」
「あ、ううん、何でもない!ただ、無糖飲めるなんて凄いな、て」
若干、挙動不審になったツナだが、獄寺には通じたらしい。
「そうですか?むしろ俺は甘すぎるコーヒーが苦手です」
「あー…、MAXコーヒーとか?」
「あれは甘すぎでしょう!人が飲むもんじゃないっすよ!」
獄寺の物言いにツナは僅かに苦笑して、ココアを買おうと、自販機に120円を入れかける。
「俺が奢りますよ。これ貰いましたし」
そう言って、獄寺の手にツナのそれが遮られた。
(わ、手ぇ大きい)
一瞬触れた手が、大きくて、結構骨張ってて、自分のとはまるで大違いであることに、ツナは少しだけ、胸が高鳴った。
(コーヒーも無糖だし、手ぇ大きいし、カッコいいし、ああ、確かに女の子が騒ぐのも分かるかも)
買ってもらったココアを口に含みながらツナは思う。
(何か、獄寺君てコーヒーみたい)
そんな考えが、馬鹿らしくて、ツナは小さく笑った。
「十代目、またボーッとしてますよ?」
「え、あ、ごめん」
そう言われて、ツナは今まで下に向けてた頭を上げる。
「あ、口の周りにココアついてますよ」
「え、どこー…」
ツナの口元を拭おうとする腕を、獄寺が掴んだ。
「獄で……」
ペロリ。
「……!」
「ああ、やっぱりココアは甘いですね」
獄寺は、さも当然だというように、ツナの口元を舐める。
「ちょっ!何やって…!」
「いや、思わず……」
そう言った獄寺の顔も耳まで真っ赤だ。
(ー…前言撤回。獄寺君は甘過ぎ)
若干肌寒くなった季節の自販機の前に頬を赤く染めたのが、二人。
END