novel-old

□※Please HELP me
1ページ/2ページ

N−G本社にて。

仕事を終えた愁一は、一人休憩室でぼんやりしていた。
浩司と順は先に会社を出ており、部屋には一人きり。
いつもなら仕事が終わると真っ先に瑛里の待つ家へ帰る愁一だが、今日はそうしなかった。
頭の中で思い浮かぶのは、今朝の何気ないことから始まった喧嘩のこと。

「はぁ〜あ・・・」

もう、何が原因でどっちが悪いのかもわからない。
そんな些細なことだったが、瑛里の機嫌が悪いというのは家に帰るのを躊躇わせるには充分だった。
反省も兼ねてどうやって仲直りしようか、と暗い部屋で唸る。

「・・・どうしよっかなぁ」

仮眠室にも使われているその部屋はちょっとした個室になっており、部屋の真ん中にテーブルと椅子、
そして壁際には小さな洗面台とパイプの簡易ベッドが備え付けてあった。
愁一はそのベッドにごろりと横になり、うつ伏せになったり仰向けになったりしながらひたすら悩んだ。
瑛里がそう簡単に機嫌を直さないこと、ヘタに接すれば余計事態が悪化するであろうこと。
果たして今自分がすべきなのは、なるべく会わないでいることなのか一刻も早く帰って謝ることなのか。

「わっかんねぇ〜・・・・」

難しいことを考えすぎた為かぼぉっとしてきた頭に、そういえば最近寝不足だったっけ、などとぼんやり思った。
瞼が、ゆっくりと重みを増す。

「・・ゆきぃ・・・」





「・・・・・・んぅ・・」

頬の痛みで目が覚めた。
それは、よく知った痛み。

「・・・ゆき・・・?」

心当たりを期待に変えて、ゆっくりと目を開いた。

「ちがうぞ?オレなのだ」

「・・・・・・・・ささささっ、佐久間さん!?」

視界に飛び込んできたのは、ベッドの横からこちらを覗き込んでいる意外すぎる人物だった。
・・・最も、今の愁一にとっては瑛里以外は全員「意外な人物」なのだが。

慌てて飛び起きようとした愁一は、目の前の人物に片方の頬を引っ張られていることに気がつく。
よく伸びる愁一の頬は、瑛里もしょっちゅうこうして引っ張っていた。
だから由貴だと勘違いしたんだ、と心の中で思いながら天井を見上げる。

竜一はつまんでいた愁一の頬を離すと、ベッドのふちに肘をついて首を傾げた。

「・・・由貴さんとケンカしたのかぁ?」

さらりと言われる、鋭い一言。
不覚にも胸に突き刺さった。

「いいんです、由貴なんか・・・」

それだけ呟くと愁一は唇をかみしめて、壁のほうに顔を反らした。

「ケンカには仲直りだぞ、しゅーいち」

「もう、いいんです・・・」

「・・・じゃあ、なんで泣いてるのだ?」

「・・・っ、泣いてません・・・っ」

「じゃーこっち向いてみるのだ」

ギシ、と2人分の体重がかかったベッドが音を立てる。

「ちょっ、さっ、な、泣いてませんって!」

ぐい、と肩をつかまれて、慌ててシーツを握り締めた。
じわりと浮かんだ涙をどうにか隠そうとした、その時。


「・・・・・あれ・・・?」

「・・・・・オレの、うた・・・」

微かに、だが確かに聞こえてきた。
聞き間違えるはずがない。
毎朝毎晩、通勤中も帰宅中も暇さえあれば聞いている、その歌。

「なんで・・・・ってあーっ!佐久間さん、オレのリュック踏んでますって!」

音の元を探して、ベッドの横に置いていた自分の荷物に気づく。
どうやら身を乗り出した竜一によって偶然、MDプレーヤーの再生ボタンが押されてしまっていたらしい。
慌ててベッドから上半身だけを起こし、リュックからMDプレーヤーを取り出す。

「・・はぁー、よかった壊れてない・・・」

プレーヤー本体は適当に買ったものなので特別執着はしていないが、中身は超プレミアもののベスト版だ。
例えその天才ボーカル自らによってだとしても、壊れるようなことがあっては発狂ものである。

「もー、佐久間さんってば気をつけてくださいよぉ。これ、樹杷にやっとダビングしてもらっ・・・」

停止ボタンを押そうとした愁一の手から、プレーヤーが奪われた。

「佐久間、さん・・・?」

顔を上げれば、思いがけず間近にあった佐久間竜一と目が合った。
それは、さっきまでの無邪気な彼ではない。
その手の中のイヤフォンから漏れる歌声を操るときの、まさにそのものだった。
その瞳に引き寄せられるように、自然と唇が重なる。

竜一は呆然としている愁一の体をゆっくり押し倒し、覆いかぶさる体勢になりながら、器用にイヤフォンのコードで両手首を繋いだ。

「・・・え?・・・あ、の・・・佐久間さん・・・?」

愁一は自由を失った両手と自分を見下ろす微笑みに、視線を行き来させる。

「なあ、俺にしとけば?」

透通るような声とともに両手を頭上に押さえつけられ、その唇がゆっくりと丁寧に首筋をなぞる。
シャツがめくりあげられて、あらわになった胸元に竜一の舌先が触れた。

「ん・・・っ・・」

身を捩ったそのすきにうまく体を滑り込ませた竜一は、愁一のズボンのファスナーに手をかけゆっくりと下ろす。

「さ、くまさ・・・っ、・・・ん・・」

遠慮なく入り込んでくる手に体を強張らせるが、直に触れられた感覚に流されて抵抗することができない。

「あんま声出したら、外に聞こえちゃうからね?」

「・・・っ!」

その言葉に、薄いドアの向こうは誰かが通ってもおかしくないことを思い出して歯を食いしばる。
竜一はそんな愁一を見て小さく笑い、露になった下半身へと顔を移動させた。
すでに形を変えたものを、ペロリと一度舐め上げる。

「あ・・・っ!」

ゆっくり形を確かめるように咥えこみ、わざと音を立てるように上下させる。

「や、あぁっ・・・さくま、さん・・・っ!もぉ・・・っ・・」

一気に攻め上げられた愁一は、耐え切れずに竜一の口内に放った。

「・・・・っん・・・」

「は・・・っ、はぁ・・・」

竜一はコクリとそれを飲み込み、肩で息をする愁一を見る。

「しゅーいち、よかった?」

「さ、佐久間さん、なんで・・・」

「ゆきえーりより、よかった?」

「・・・・!」

飲み込みきれなかったぶんを舌先で拭って、真正面から向かい合うように覆いかぶさり、唇を重ねる。
片方の手で果てたばかりの愁一のものを一度擦り上げ、その奥にゆっくりと指先を埋めこんだ。

「やっ・・やめて、ください・・・っ!」

「なんで?ゆきえーりなんか、もういいんでしょ?」

1本、2本と竜一の指が奥を探るように中に入る。
また反応を始めた愁一自身を、もう片方の手で撫でた。

「だ、め・・・っ、あ、んっ!」

「ヤってるんでしょ?あいつと。ココ、慣れてるもんね」

すんなりと3本目の進入を許したそこを広げ、涙目で声を押し殺している愁一を見下ろす。

「なん、で・・・っ・・・」

「こんなことするのかって?決まってるじゃん」

ギシッとベッドの軋む音がして、竜一が体を起こした。
刺激を与え続けていた指が抜かれてかわりに触れた熱いものに、愁一は体を強張らせる。

「お前のことが好きで、アイツのことが嫌いだからだよ」

「うああぁ・・・っ!!」

突然突き上げられる衝撃に、思わず声が上がった。
縛られたままの両手で必死にシーツを掴む。
容赦なく打ち付けられるその刺激に耐えることに夢中で、たった今の言葉の意味を理解することができなかった。

規則的なベッドの軋む音と、頭上で響く微かな歌声。
そしてその声と同じ人物から漏れる吐息。
言い表せない心地よさと、絶え間なく与えられる快感に、思わず身を委ねてしまいそうになる。

「あっ、ん・・・ぅ、さくまさ・・・っ!」

「も、すこし・・・っ・・しゅーいち・・・」

竜一は体を倒し、愁一の体を包み込んで抱きしめた。
それによって先走りを漏らす愁一自身は自分と竜一の腹に擦られ、さらに快楽を深くする。

「も、だめ・・・ぇっ・・・さくまさん、出る・・・っ!」

「・・・っ、いーよ、出して・・・」

腰の動きが速まり、最奥を突いた。

「あ、あああぁ・・・っ!!」

同時に愁一のものから白濁液が吐き出される。

「・・・っく・・・」

その刺激で締め付けられた竜一が、愁一の中に放った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ