novel-old

□※ちょっとした「幸せ」
1ページ/2ページ

真っ暗な部屋に浮かび上がるパソコンの画面を睨み続けて、もう数時間が経っているはずだ。
構ってほしいとうるさく話しかけてきていた恋人は一喝するとすぐに大人しくなり、しょんぼりと部屋から出て行った。
指先の動きを止め、なんとなく耳を澄ませてみても物音ひとつ聞こえてこない。
「・・・・ふー・・」
メガネを外し、そのまま背もたれを軋ませて溜息を吐いた。
力を抜いた途端、僅かに身体に重みが増した気がして瑛里はふと考え込む。
体勢を変えずに暫く何もない空間を見つめ、そういえば最近ご無沙汰だな、と冷静に思った。
重みを感じるのは正確には下半身で、その理由はここ数日重なった締め切りだろう。

余計なことを考える前に、瑛里は立ち上がり部屋を出た。
時間の感覚が無くなっていたので、廊下に差し込む日差しを見て今が真っ昼間だということに初めて気付く。
出掛けているかも、という心配が過ぎったのは一瞬で、求めた姿はすぐに見つかる。
リビングのソファに身体を沈めて退屈そうにしていた愁一は、瑛里の気配を感じるとすぐに飛び起きて駆け寄ってきた。
「由貴―っ!!仕事終わったの?」
犬のような耳と尻尾の幻覚が見えそうなほどに喜びを露にして飛びつき、きらきらした瞳に見つめられる。
壁を背にそれを受け止めた瑛里は、いつになく優しくその身体を抱き締めてみせた。
「・・・っ、由貴?」
喜びと驚きが混ざったような表情で見上げられたのを見計らって、次は優しいキスを贈る。
「・・・・ふ、・・・っ」
先程までの無邪気な様子とは違う、熱を帯びた瞳に少しずつ変わっていくのを見て、瑛里は満足そうに微笑んだ。
「ずっと相手してやらなかったから溜まってんだろ?」
低く囁いて服の中に手を忍ばせながら、さりげなく体勢を変えて愁一を壁に凭れ掛けさせる。
「ゆきぃ・・・」
されるがままに座り込んでしまった愁一の腕はしっかり瑛里の首に回っていた。
「・・・ベッド、行くか?」
「ん、いい・・・からぁ・・・」
その返事に、瑛里は小さく笑う。
「そんなに早くヤりたい?」
意地悪くからかうように言うと、愁一は少しだけ拗ねたように下を向いた。
「だって、ずーっと待ってたんだもん・・・」
予想外の素直な言葉。
じわりと身体が熱くなるのを感じた。
「・・・ヤってやるよ・・・嫌になるまでな?」
「え?・・・あ、いや、そ、そこまでは・・・」
極上の笑みを返せば、危険を察知した愁一が肩を強張らせた。
壁に凭れたままの愁一に逃げ場はなく、瑛里の指先は胸の突起への愛撫を開始する。
「あっ・・・ん・・・」
途端に漏れる甘い声に満足しながら、開いている手を下半身に伸ばした。
器用に下を脱がせ露わになったそこは、しっかり反応を見せている。
「ひぁっ・・・」
きゅ、と握り込むと、びくんと愁一の身体が仰け反る。
ゆっくり上下に擦りながら服の中に顔を埋め、つんと立った赤い突起を舌先で転がした。
「は・・・っ、ン、だめ・・・っ・・・」
瑛里の頭にしがみついていた愁一の腕に力が入り、呆気なく達してしまう。
「・・・早すぎる」
「ごめ・・・だってぇ・・・っん!」
弁解を遮るように後孔に手の平に放たれた白濁を塗り付け、一気に挿入した。
熱く絡みつくそこは誘うように2本目、3本目を飲み込んでゆく。
内壁を撫でながらもう片方の手で愁一自身を扱けば、放ったばかりのそこはすぐに硬度を取り戻した。
「や・・・ゆ、きぃ・・・オレ、また・・・っ・・・」
縋る手の力が強くなり、限界を訴えた。
途端、追い上げていた瑛里の指が抜かれる。
突然なくなった刺激に、愁一は物足りなさげに瑛里を見上げる。
「ゆきぃ、なん・・・っあぁ、ン!ん、あ・・っ」
予告なしで猛る欲望を突き立てれば、一際高い嬌声が上がった。
思うままに揺さぶり、仰け反った白い首筋に吸い付く。
「ひあ、んっ、激し・・・や、あぁ・・っ!」
飛び散った飛沫がフローリングを汚す。
それでも構わず、痙攣する中を味わうように更に奥へと捻じ込んだ。
「ふぁ・・・っ・・・奥、だめぇっ・・・」
「だめ?イイの間違いだろ」
真っ赤な顔が快楽に溺れていることは明らかで、瑛里は意地悪く笑って腰を打ち付ける。
「んっ、い・・・ぃ・・・っ・・・ア、またでちゃう、よぉ・・っ」
だんだん早まる動きと乱れる呼吸に、瑛里も限界を感じる。
愛しいはずのその身体を労わる余裕もなくて、ただただ欲求を満たす為に突き上げた。
「は・・・ぁ、あぁ・・・ん・・っ!!」
「・・・っく・・・」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ