novel-long

□☆きみのすべてを。 (土⇔沖前提銀沖)
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いつからだっけ?
この子が、頻繁にここに来るようになったのは。

最初は、万事屋は休憩所じゃないですよー、とか言って軽くあしらっていた。
それも今では、いちご牛乳なんか出して持て成しちゃってるし。

チャイムが鳴ると、妙にウキウキしちゃってるオレがいるし。

戸を開けてこいつが居ようものなら、飛び上がるくらい嬉しくなっちゃってるし。

そう、つまり、恋しちゃってるわけだ。
もちろんそんなこと微塵も顔には出さないけれど、自分でもヤバイくらい、相当ハマっていると思う。

たまーに見せる人懐っこい笑った顔とか、
ふとした時のちょっとした触れ合いとか、
乙女かってくらいドキドキしてるんだよ?

でもね、こんなに想っているのに、こいつの口から出るのは、あの男の話ばかり。

「・・・それでねィ、旦那。土方のヤローがね・・・」

ほら、また。
俺は肩肘机に付いて、ぺらぺらと今週のジャンプなんかめくりながら、適当な相槌を打つ。
話半分で聞いているふりしているけれど、ジャンプの内容なんかちっとも頭に入ってこない。

尽きない愚痴は、四六時中一緒にいるからこそで。
どれほどこいつの中をあの男が占めているのか、思い知らされる。
ていうかね、愚痴なようなソレ、裏を返せば惚気に聞こえるんだよね。

俺は、知ってるんだ。
きみがあいつを好きなこと。
あいつがきみを好きなこと。

見てればわかる。
知らないのは、本人たちだけ。

だからこの2人のまどろっこしいお子様みたいな恋愛が成立する前に、なんとかしなくちゃいけないわけだ。


「・・・っ、ぅ・・・?あれ・・・旦那、急に、あたま、が・・・」

コト、とグラスを置く音と、苦しそうな沖田くんの声。
この瞬間を待ち構えていた俺は、ジャンプを閉じて、椅子から立ち上がる。

「なんか、おかしいんでさァ・・・ちょ、なんとかしてくだせェ・・・っ」
「んー、なんだろうね?まって、今そっち行くから」

本当は駆け寄りたい衝動を抑えて、なるべくゆっくり、一歩一歩近付いてゆく。
迫ってくる俺を、助けを求めるように見つめるけれど、それは見当違い。
そうさせたのは、俺なんだから。
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