novel-old

□※災難
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樹把に引かれるまま一番奥の個室に連れ込まれ、鍵が閉まる。
想像以上の窮屈さに不安がよぎるが、樹把はお構いなしの様子だ。
壁を背に向き合い、早急に下を脱がされる。
限界まで膨張したものを目の当たりにして、再び羞恥心が襲った。

「樹把、やっぱ・・・」

「今さらヤメロなんて言わせねーぜ?」

「ん・・・っ」

俯いた顎を捕らわれ、乱暴に唇を重ねられた。
勢いついてしまった口付けは止まらず、息苦しさに開いた隙に舌が入り込み、愁一の思考を遮断していく。

「んぅ・・・」

「こーしちゃえばさ、どうでもよくなっちゃうでしょ?」

「ふぁ・・・あ・・・」

「男ってそういうイキモノなのよ」

「あっ、や・・・ん」

今まで触れていなかった後ろに指を埋め込まれ、全身に甘い痺れが走る。
慣らす為だけに増やされていく指から快感を拾い上げて、樹把の背中にしがみ付いた。
自然と揺れる腰が求めるものは明白で、おざなりな刺激に物足りなささえ感じてしまう。

「たつ・・・はぁ」

「んー?なに?」

首筋に噛み付いたまま、樹把が緊張感のない返事をする。
わかってるくせに、という言葉を飲み込んで、背中に回した腕に力を入れた。
樹把が言わせたい言葉はわかっているけれど、自分の身体に対する最後の意地と抵抗かもしれなかった。

「う、んっ・・・ぅ・・あぁ・・ん」

途切れ途切れの声は時間が経つほど艶を含み、樹把の聴覚をじわりと刺激する。

「すげぇヒクヒクしてる。ほら・・・」

すでに埋め込まれた3本の指を樹把が引き抜こうとすると、中が収縮してそれを引き止めた。
樹把はその反応を目を細めて楽しみ、もう一度奥へと探りながらあいている手で自分のジーンズの前を開けた。
取り出されたものは電車で感じた時よりも質量が増しているようで、愁一が小さく喉を鳴らす。

「は、やく・・・っ、ん、ぁ・・・」

「はやく、なに?」

「・・・・・っ」

涙の浮かんだ、求めている瞳を見られたくなくて樹把の胸元に顔を埋めた。
身体はもう限界までそれを欲している。
樹把が僅かに動くたびに愁一の熱に大きな塊が掠り、その半端な刺激にさえ煽られていく。

「なぁ、言えよ。・・・ツライだろ?」

適当に動かされていた指が、一番弱いところに触れ始める。
でも足りなくて、もどかしさで頭がおかしくなりそうだった。
何も考えられず、ただ次の刺激だけを求める。

「・・・て、たつは、いれてぇ・・・」

言わされたというよりは自然と溢れ出した言葉。
もう理性は消え去り、求めるままに樹把を見上げた。
触れるか触れないかくらいの距離まで近付いた樹把の顔も、笑顔ではあるが余裕はない。
樹把は背中に回されていた愁一の腕をとき、身体ごとうしろ向きにさせて壁と向かい合わせる。
突き出された蕾に樹把の先端が触れた。

「ふ…ああぁっ…!」

真っ直ぐに貫かれて、愁一が背中をしならせる。
すっかり慣らされていたそこはなんの抵抗もなく奥までの進入を許し、予想以上の締め付けに樹把も身体を強張らせた。

「っ、お前、締めすぎ…」

「あっ、ん…っ、ぅ…」

狭い個室は自然と2人を密着させ、包み込むように覆い被さる樹把の声も刺激となって愁一の耳に届く。
ペースを取り戻した樹把が愁一の細い腰をつかんで、揺さぶった。

「やぁぁっ、あんっ、んっ、あっ…!」

すぐに一際高い声が響き、真っ白な壁に白濁液が放たれた。
車内からずっと焦らされていたものを解放した衝撃は強く、樹把が支えていなければ座り込んでしまいそうなほどに力が抜けてしまう。
すかさず樹把の片手が腰から前へまわり、ピクピクと震えているものをやんわりと包んだ。

「もーちょっとがんばってくれる?」

ゆっくりと動き出すその手に合わせて、未だ熱をもったままの樹把が再び突き上げを始める。

「あ…はぁっ、も、ムリ…っ」

逃げようにも腰をひくことすらできず、与えられ続ける快楽に悲鳴をあげた。
放ったばかりのものは触れられたことで意志に反して張りを取り戻し始め、辛いはずの快感を求める。
シーツと違って縋ることができない冷たい壁に爪を立てて、身体中を支配する甘い感覚をやり過ごそうとする。

「…っく、いく、…もー少し…っ」

「やあぁんっ、あ、んああっ」

締め付けさせるために愁一自身を握る手の動きを早め、ぎりぎりまで引き抜き、一気に最奥を突いた。

「……っ…、ぅ…」

「ふあぁっ……!」

身体の奥に熱い液体が広がるのを感じて、愁一もまた壁を汚す。

「…っと…」

途端にガクリと崩れ落ちそうになった上半身を支え、樹把は息をついた。






「お前のせいだからな!どーすんだよ!」

終電がなくなったあとの真っ暗なホームに、愁一の声が響く。

「俺のせいにすんなよ、駅の人に言って出してもらえばいーだろ」

「ふざけんな、オレだってバレたらなんて言い訳すんだよ!?」

「なんとかなるっしょ」

無責任な言葉だけ返して自動販売機に小銭を入れている樹把に何を言っても無駄だと悟り、愁一は肩を落とす。
ただでさえホモカップルで世間的に有名なのに、こんな時間に男とホームで終電を逃すなんて不自然すぎる。

「始発まで待つしかないか・・・」

諦めて呟いたその言葉に樹把の目が光った。

「んじゃ、もっかい行っとく?」

さわやかな微笑みでトイレを指差す樹把に、本気で線路を飛び越えようかと悩んだ愁一であった。
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