novel-old
□※アルコール・マジック
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「・・・・・何やってんだ」
「・・・・・ふぇ?」
閉じた目を開くと、瑛里のズボンの前を開けながら見上げる愁一と目が合う。
一瞬へらっと笑った愁一は、また何事もなかったようにゴソゴソと手を動かし始めた。
「・・・おい、しゅうい・・・っ」
瑛里の制止の声など聞かず、取り出されたものに愁一の赤い舌が這わされた。
銜え込む確かな刺激ではなく、小さな舌先から与えられる僅かな快楽に瑛里は体を震わせる。
「ん、・・・っ、・・・ぅ・・」
酒のせいで体中の神経が敏感になっているのだろうか。
皮膚が薄くなったようなそんな感覚の中、触れられたその部分だけが妙に際立って、背筋にぞくりと快感が伝う。
「や、め・・・しゅ・・・」
酒のせいでぼぉっとしている今、この刺激にはいつもの余裕がもてない。
このまま達してしまうのだけはどうしても避けたくて、ぐいぐいと頭を引き剥がそうともがいた。
「んぅ・・・由貴、どぉしてえ?」
力一杯押し返されて、愁一は不思議そうに顔を上げる。
様子を伺うように見つめられて、瑛里は咄嗟に顔を逸らした。
自分ではわからないが、きっと情けない顔をしているだろう。
息を整えていると、愁一が立ち膝になり瑛里のシャツのボタンをゆっくり外していく。
逸らした顔を覗き込むように、大きな瞳を向けてくる。
「よく、なかった・・・?」
か細い、不安そうなその声。
長い睫毛の下には涙が浮かんでいる。
腰にぎゅうっとしがみついているのは、抱き締めているつもりなのか、ふらつく体を支えているだけなのか。
「・・・エロガキ」
「・・・・っ!」
ようやくいつもの意識を取り戻した瑛里は、寄せられた愁一の耳元で囁き、パジャマのズボンと下着を一気におろした。
すでに形を変えていたそこは、突然触れた外気にさらに刺激されて先走りを流す。
「ゆ、き・・・・」
僅かに体を離し、両腕を瑛里の首に回す。
瑛里はそれに答えるように前屈みになると、前には触れずに後ろに手を回し、ひくついているそこに指を埋めた。
「あっ・・・・ん」
すんなり受け入れたそこは、とろけるように熱い。
愁一もいつもより敏感になっているようで、何度か中を探っただけで小さく身震いをした。
「・・・もうイったのか?早すぎるだろ」
「ごめん・・なさぃ・・」
恥ずかしそうに頬を染めて俯こうとした顎をとらえて、唇を重ねる。
「ふ・・・っ・・・んんっ・・」
突然の深い口付けに、健気に必死で答えようとする。
伝った唾液を拭うこともせずに何度も角度を変えてやれば、放ったばかりの愁一のものがすぐに反応を示した。
それを見計らって、今度は体ごと愁一を引っ張りあげ、ソファの上で自分に跨るように座らせる。
唇で首筋を辿り、片方の手で器用にパジャマの前のボタンを外した。
もう片方の手では、あっという間に元気になったものをやんわりと愛撫する。
「ゆき・・もっとぉ・・・ね、もっとして・・・」
焦れったい刺激に痺れを切らしたように、瑛里の猛りに自分のものを擦りつけた。
いつにも増して積極的な愁一に、瑛里も今回ばかりは余裕がない。
白い肌にぷっくりと浮き上がった胸の飾りに舌を這わせながら、ふわりと愁一の腰を浮かせた。
「あ、んっ・・・」
すぐにでも受け入れたいとでも言うように蠢くそこに熱いものを当てがった途端、切なげな声が漏れる。
「触れただけで反応してんじゃねーよ」
快楽を待つ愁一の顔を見て、瑛里は意地悪く笑った。
「だって、由貴がぁ・・・っ・・」
「・・・俺が、なんだ?」
「ゆき、が・・・っ、焦らすからぁ・・・」
「・・・全部お前のせいだ、それすらわかんないのかこの頭は?」
「・・・え?なに・・・あ、あああぁっ!!」
細い腰を支えていた手を離し、愁一の頭を押さえ込む。
最早自分の体重を支える力なんか残っていなかった愁一は、一気に貫かれる形になった。
「うあ、あぁっ!あ、んっ、・・ん・・っ!」
そのままの勢いで下から何度も突き上げてやれば、よく透る声が心地よいリズムを奏でる。
力の入らない腕で必死にしがみついてくるのが、なんともいじらしい。
本当は瑛里にも焦らす余裕なんてなかったのだ。
しかしそうでもしなければ、自分の方が達してしまいそうだった。
現に今、自分を銜え込んで離さない愁一をどうやって先にイかせようかと頭をフル回転させている。
愁一が一際大きく声をあげるところを狙って、何度も打ち付ける。
耳から首筋にかけてのラインを丁寧に吸い上げ、先走りが溢れ震える愁一自身を弄るのも忘れない。
全てを駆使した瑛里からの快楽に、愁一はあっさりと果てた。
「は、はぁっ・・・ぁ・・・ごめ・・・」
肩で息をしながら、汚してしまった瑛里の腹を申し訳なさそうにそっと撫でる。
「・・・っ、」
咄嗟にその腕を、瑛里の大きな手が掴んだ。
不覚にもそれすら刺激となって瑛里を追い上げようとする。
「ゆき・・・?ん、あっ」
つがったままで、瑛里は愁一の体をソファに沈めた。
その微妙な刺激に、愁一がまたぴくりと反応し、ぎゅっと目を瞑る。
「ゆ、き・・・・」
「きっちりイかせろよ、愁一」
その言葉に恐る恐るまぶたを上げた愁一は、言葉を失った。
目の前にあるのは、いつもの余裕たっぷりの笑顔ではない。
放つ言葉こそ普段の瑛里だが、その表情に余裕は少しも感じられなかった。
「ゆき、顔、赤いよ・・・?」
小さな温かい手が、瑛里の頬に伸ばされる。
「酒のせい、だ・・。」
瑛里は頬に触れたその手を掴み、ソファに押し付け唇を重ねた。
一瞬で愁一の視界を金色が奪う。
天井の蛍光灯が、余計にそれを引き立たせた。
「ん、ふっ・・う・・」
唇を塞いだまま、愁一の中の瑛里が再び動き出す。
それに合わせて、愁一のものもまた堅さを取り戻した。
「何回でもイけんだろ、エロガキ・・・」
「あ、やっ、もぉ、やだぁ・・・」
さすがに愁一にも体力の限界が来たのか、激しい打ちつけに首を振って耐えている。
瑛里の中の理性はとっくになくなっていて、思うがままに奥へと腰を突き進めた。
「だ、め、イく・・・っ!も・・ゆきぃ・・・っ!」
「しゅ・・・いち・・・っ・・」
愁一の中に温かい液体が放たれるのと、再び瑛里の腹が白く汚れるのはほぼ同時だった。
最後の一滴までも中に残し、ずるりと自分のものを引き出す。
その刺激にすらぴくりと反応を示した愁一だが、意識を失っているようだった。
「・・・ヤりすぎた、か・・・」
上がった息を整えながら、すやすやと眠る愁一を見る。
汗ばんだ額に貼り付いた前髪をはらってやり、その唇にそっとキスを贈った。
次の日、すっかり記憶をなくした愁一は謎の頭痛と腰痛に悩まされることになった。
そして後日。
愁一の仕事の打ち上げで飲み会が開かれた際、いち早く迎えに来た瑛里に、関係者一同が驚かされることとなる。
「な、中野さんが瑛里さん呼んだ・・・んですよね?はは・・・ほんと友達思いですねぇ」
「落ち着け、藤崎・・・俺じゃない。ついでにさっき愁一が由貴さんに電話したときも、迎えに来いとは一言も言ってなかった」
「じょ、冗談でしょう。中野さんは嘘がヘタですから、もう・・・」
「・・・俺も冗談だと思いたいよ・・・」
「・・・てことは、瑛里さんが自ら新堂さんを迎えに来た、と・・・」
「・・・そうなるな・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「の、飲みましょう、中野さん」
「そうだな、藤崎・・・」