Cannot escape from here.
□We moved.
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窓から明るい太陽の光が差し込む。
外からは、双子とエリオットが喧嘩をしている騒がしい声が聞こえてくる。
それらによって私は目を覚ます。
居心地はいいけれど、この騒がしさはいただけないわね。
…さて、今日は何をしようかしら。
本を読むのもちょっと飽きたわね。たまにはどこかに出かけようかしら。
ああそうだ、出かけるならアリスも誘って…
体を起こし、小さく欠伸をしつつそんな事を考えていると、部屋のドアが軽くノックされ、そこからアリスが現れた。
「あら、アリス。おはよう。」
「あ、ごめんなさい。起きたばかりだったのね。」
「別に構わないわ。どうしたの。」
私が寝起きなのに気付くと慌てて扉を閉めようとするアリスを止め、用件を尋ねる。
女同士なんだから、気にしなくてもいいのに。
「あのね、コア。引越しって知ってる?」
室内に入り、扉を閉めると彼女は手近な椅子に腰掛けつつ小首を傾げる。
「ああ、引っ越したの。あなたは初めてよね。」
「コアはやっぱり知ってたのね。土地が引っ越すだなんて想像もしなかったから驚いちゃったわ。まだ信じられないけれど。」
ベッドから下り、ドレッサーの引き出しから櫛を取り出して髪を梳きつつ彼女の話を聞く。
何回か経験しているから慣れてしまったけれど、私も初めて引越しを経験した時はこんな感じで驚いたわね。
相変わらず驚きを語っている彼女を眺めながらそう思った。
「でね、折角だからこの国を探検したいんだけど、一緒に行かない?」
ほら、ブラッドは昼間外に出たがらないし、エリオットは忙しそうだし、双子には仕事をさせないといけないじゃない?
と、彼女はキラキラとした瞳で語りかける。
「そうね。私も丁度貴女と出かけようと思っていたところよ。」
普段は変に大人びているのに、今日は子供のように無邪気に笑っている彼女。
ここに残ると決めた事で少し吹っ切れた部分もあるのかもしれない。
くす、と笑いながら彼女の提案を受諾すると、彼女は準備をしてくるといって部屋を出て行った。
私は、鼻歌を歌いながらクローゼットからいつもの服を取り出し、着替えていく。
こんなにうきうきするのはいつぶりだったかしら。
この世界は大好きだし、役持ちの人達も大好きだ。
女友達だってビバルディが居る。
だけど、歳の近い女の子の友達はアリスだけ。
だからこんな普通の外出は久しぶり。
アリスが言うには今回はクローバーの国に引っ越したみたいね。
だったらクローバーの塔の近くの町で買い物をするのが良いかしらね。
あそこは比較的治安も良いし、アリスもきっと気に入るわ。
何を見よう。何を買おう。何を食べよう。
とお出かけ。
ああ楽しみだわ!
「………?」
期待に胸をときめかせながら黒いヘッドドレスのリボンを結んでいた時、突然脳裏に浮かんだ嬉しそうな自分の姿。
「コアー?準備できたー?」
「ごめん、今行くわ。」
それが何なのか気になったが、丁度やってきたアリスへの返事をした後にはもうすっかり忘れてしまっていた。