頂き物

□知盛騎士疑惑
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「クッ…相変わらずの、間抜け面だな…」

ぶちのめしますよ…?
私が普段から間抜け面かどうかは、この際晴れやかな南の空に投げ捨てておいて下さい。
今日、今この時の間抜け面は、半分は浮かれたクリスマスムードのせいで。
もう半分は、そんな日も無関係な態度をとっていた知盛の突然のサプライズプレゼントを目の当たりにしたせいなんですけども!?
嫌な顔もせず、嫌味も小言も言わず。

あっさりと一緒に出掛けてくれた事も私的には、青天の霹靂なんですがね。
この上、知盛からプレゼントがあるとか言いやがりましてございますか!?(あれ、なんか言葉おかしいけど)
通りすがる女性方は、ほぼ皆さんが知盛を見つめながら歩いていて。
…見た目に騙されると、噛みつかれますよ皆さん。
確かに、いい男なのは否定しませんが。

「…ほう、余所事を考えるとは…クッ、俺だけでは物足りないとは、貪欲な、恋人殿だ…」

やめんかい、歩く猥褻物!
そのやたらありふれてる色気と狂気のミックスオーラを無差別に振りまかないで下さい。
相手の私にまで、いらない視線が向けられるじゃないですか。
私は、平凡を極めるって決めてるんですからね。

「いるのか、いらないのか…はっきりと、して頂こうか…?」

くれるんなら、そりゃ貰いますよ。
知盛からなんて、それこそオリンピック並のサイクルでしか手に入れられないんですから。
差し出した手に、重なる知盛の手。
無駄のない動作で、私の手は知盛の唇まで誘導される。
ちゅ、と。
触れた箇所に、痺れるような小さな痛み。

「…では、差し上げようか…俺の、未来の…その先まで、な…」


左手の薬指に、鮮やかな紅の花びら。
人混みのど真ん中、注がれる好奇の眼差しすらも背中ではじき飛ばして。
優雅としか言い表せない仕草で跪いた知盛は、私を見上げて淡く微笑った。


「…クッ、お前は本当に、よく、泣く…」


これは全部、知盛のせいですよ!!
手で掴める物じゃない。
目に見えるわけでもない。
それでも、ただこうして告げられた一言が何よりも嬉しくて。
何気にプライドの高い知盛が、こんな人目の多い場所で示してくれた誠意。
溢れて止まりそうにない涙を受け止めてくれる指先は、ふんわりとした羽のようで。

「…まぁ、いいさ…好きなだけ、泣けばいい…」

知盛がそんな優しい事を言うもんだから、私は余計に泣いてしまって。
ボロボロに晴れた瞼を将臣にからかわれ、あまりにも腹が立ったので。

とりあえず、ゆず君に泣きついて制裁を与えといて貰いました。


◆嬉しくて・楽しくて・幸せで◆


(勿論、お前からは…お前自身を、頂けるの、だろう…?)
(…え゛?!?)
(クッ、楽しませて、くれよ?)
(ちょ、ゆず君ヘルプーッッ!!)


*∵*∵*∵*∵*∵*∵*∵

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