月華の戀語り2
□声なき愛
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「アレン、おいアレン!」
(ガサガサッ)
「ああ、そこか。」
広大で色鮮やかな庭園・・・・
その中を、今は短くしてしまった髪のクロスはゆっくりと歩いていて、弟子の名前を呼んで近くの茂みが動くとそちらへ足を進めた。
植木をかき分けた中には、金髪碧眼の少女が飼い猫を抱き締めて座っていて、クロスはそれに口元をゆるませると、優しく猫ごと彼女を抱き上げるのだった。
少女は恥ずかしそうに俯いて、猫を抱き締める力を強める。
しかし口は一切開かなかった。
クロスはそんな姿を見つめながら話し出す。
「外が好きなのはわかるが、一人でそこら中動き回るな。まだお前に付けるゴーレムは完成していないんだぞ。迷子になったらどうすんだ。」
(プゥッ!)
「むくれんな、仕方ないだろう。ゴーレムが出来れば、好きに動いていい。」
(ニコッ)
「フッ・・・・げんきんな奴だな、お前は。」
ニコニコと猫を抱き締めながら笑い続ける彼女に、クロスは苦笑を浮かべていた。
少女は・・・・・確かに、クロスの唯一の弟子であったアレン・ウォーカー本人だった。
ただ、彼女はその記憶を失ってしまったのだ。
奪われた意思を取り戻す為に、14番目と戦い、精神をすり減らす死闘をして・・・・。
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