二次小説(ごちゃ混ぜ)

□RAIN
1ページ/1ページ

ー雨は嫌いだ。
 何か嫌なことを思い出すから。


急に雨に降られてずぶぬれになった誠志郎はうつむきながら、とぼとぼと歩いていた。

「…楠木?」
突然誠志郎の上に雨が落ちてこなくなり、聞き覚えのある声が流れる。誠志郎が顔を上げると、制服姿の飛鳥井柊一が傘を傾けていた。
「飛鳥井?わ、珍しいな、制服姿なんて。
学校帰りなんだ?」
沈んだ心を悟られないように、わざと明るい声で誠志郎は言う。
「…まぁな。楠木こそこんな雨の中傘も差さないで、風邪引くぞ?
あぁ、何とかは風邪引かないって言うか」
「悪かったなぁ…急に雨に降られたんだよ。傘も持ってなかったしさ。家に帰るには微妙な距離だったし、濡れて困るのも今持ってないし」
だから、あきらめただけだよ。
そう言って誠志郎は無造作にレモンイエローの前髪をかきあげる。
「僕の方に傘向けてると、飛鳥井が濡れるよ?」
「楠木はこれからバイトか?」
柊一は制服が濡れるのもかまわないのか、傘を誠志郎に傾けたまま問う。
「ん?あぁ、そう。あっちにも着替え置いてあるから、あっちに行って着替えてから仕事」
飛鳥井は?誠志郎が問う。
「僕は仕事中だ。学校帰りに御霊部に行ったら雅行に仕事押し付けられた」
「え?じゃ、こんな所で僕としゃべってたらまずいだろ?」
「いや?行き先はヤミブンだからな。楠木ちゃんと傘の中に入れ」
一緒に行こうと言う柊一に、誠志郎は柊一が濡れるからと傘に入ることを渋る。
柊一は半ば無理矢理自分のほうへ引き寄せて傘の中に入れた。
「…」
もう少し早く中に入れてやるんだった。柊一は心の中で舌打ちする。
誠志郎の体は雨に濡れて冷たくなってしまっていた。

ーうつむき加減で歩いていた誠志郎を見つけたとき、思わず声をかけていた。

なんだか、そのまま雨と一緒に流されて消えてしまいそうだと思ったのだ。
無意識のうちに声をかけていた自分にびっくりしたが、今となっては声をかけた自分に拍手を送りたい気分になっていた。
近くに引き寄せた誠志郎は、顔色が明らかに悪かったし、いつも傍にいない自分でもわかるほど、誠志郎の気分が沈んでいることがわかってしまったから。
「何か悩み事か?楠木」
ヤミブンへ向かいながら柊一が言う。
「…別に。何でそう思ったの?」
「何か楠木が沈んでる気がしたから」
「!!」
柊一のその言葉に誠志郎は驚いた表情を見せた。
「そんなに顔に出てた?」
「僕がわかるほどにはな」
何かあったのか?柊一が問う。
「別に何かあったわけじゃないよ。
最近雨ばっかりで嫌だなぁって思ってただけ」
「楠木は雨が嫌いか?」
別に強がりや嘘でごまかそうとしてるわけじゃなさそうだったので、柊一はそのまま問う。
ごまかそうとしてたなら、無理矢理にでも聞きだすつもりだったのだが。
「…あまり好きじゃない。特に一人でいると考えなくてもいいこと考えるし、何か気分が沈むんだ」

飛鳥井は?

「僕は別に嫌いじゃない。鬱陶しいと思うことはあるけどな」
「え?」
「曇りか雨なら、雅行が仕事してくれるからな。僕はそんなに忙しくならないんだ。
それにーーー」
「…それに?」
「久々に楠木に会えたし、話せたし、一緒に歩いてるし。
雨に感謝、だろ?」
「ーーーーーっ!!」
柊一の見せた極上の笑みを向けられ、誠志郎の顔は一気に真っ赤になる。
「楠木。一人でいるのがいやな時は僕に電話して来い。傍にいれる時は傍にいるし、傍にいられない時は声だけでも届けるから」
柊一はそう言って誠志郎の肩を抱き寄せる。
「飛鳥井…」




…正直雨は好きじゃない。
 考えたくないことばかり、考えてしまうから。
 自分は、一人なんだと思ってしまうから。



…でも。

「ありがと、飛鳥井」

でも、君が傍にいてくれる。
なら、雨の日も怖くない。
悪くないかもって思うんだ。

end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ