Normal 2


□Lechery
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(悔しいけど)師匠は博学だ。(駄目人間のくせに)その知識は豊富で、専門の科学だけにとどまらない。
(悔しいけど)読み書き計算くらいしか学のない僕は、いつも師匠に馬鹿だの阿呆だのけなされてしまう。事実だから反論できないのも余計に憎らしい。

師匠はわざと難しい話をし始めて、それで僕が混乱していると楽しそうに笑う。お前は馬鹿だな、そう言いたいがために難しい話をするんだと確信している。



要するに、あの人はただ自分の優秀さをひけらかしたいだけなんだ。









修業時代、師匠は僕にある問題を出した。



日本の『Suibokuga』とかいうモノトーンの絵が愛人さんの家に飾ってあって、それを僕がじっと眺めていたときだ。
左目で見える世界にそれは似ていて、これを描いた人も僕みたいな目を持ってるのかなって思った。そんな僕を師匠は鼻で笑う。

「馬鹿、これはこういう絵なんだよ。墨を線だけでなく面的に使用することで、濃淡や明暗を表現する。中国では唐代後半、日本では鎌倉時代に広がった。その作品は日本で名高い雪舟のものだろう」

「はぁ…」

師匠の言ってることがちんぷんかんぷんで、僕はぽかんと口を開けていた。愛人さんはうっとりとした目で師匠を見つめ、物知りですわねと言う。

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