Parallel


□友達
1ページ/3ページ



少年は街にいた。
買い物を頼まれたからだ。目当ての物を求めに酒屋へ行く。

しかし少年は方向音痴だった。
地図も渡されないまま追い出され、一人広場の噴水の前で立ち尽くしていた。



少年はため息をつく。
先程から周りの視線が痛かった。顔に大きな傷のある全身黒ずくめの少年が異様に見えたのだろう。
しかしこのコートを脱いでしまえば視線がさらに痛くなるのは明らかだ、少年は被っていたフードをさらに深く被った。

すると、一人の少女が近付いてきた。肩くらいまで伸びた黒髪に大きな目。彼女はどう見てもこの国の人ではなかった。

「あなた、どうしたの?」

少女は心配そうにそう尋ねる。少年の顔については気にしていないようだ、少年はほっとした。

「酒屋に行きたいんですが、場所が分からなくって…」

「そうなの。じゃあ案内してあげる」

少女は笑顔でそう言った。









──少女の案内で酒場につく。数本の酒を受け取り店を出た。

「本当にありがとうございました」

少年が深々と礼を言うと、彼女は困ったように笑った。

「いいのよ、そんな。気にしないで」

「いえ。何かお礼させて下さい」

少年がそう言うと、彼女は少し考えるそぶりを見せてから言った。



「うーん…、じゃあ、私と友達になってくれる?」



彼女は笑顔で少年に左手を差し出す。少年は驚き、そして恐る恐る左手を差し出した。

すると、コートと手袋の間から火傷の痕が見えてしまったようだ、彼女は目を見開いた。

「あなた、どうしたの、ソレ…」



あぁ、終わりだ。



少年はそう思った。普通の人は大抵これを見て気持ち悪がる。
しかし彼女は泣きそうな顔をして少年の左手を力強く握った。

「ひどい、こんな目にあって…」



これは驚いた。

少年はぽつりぽつりと話す。



「戦争で、やられたんです」

「許せない、こんなこと…」

彼女は下を向き、それから顔を上げて少年に笑顔を向けた。



「これからよろしくね!!」



「はい…、はい…!!」

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ