Parallel
□友達
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少年は街にいた。
買い物を頼まれたからだ。目当ての物を求めに酒屋へ行く。
しかし少年は方向音痴だった。
地図も渡されないまま追い出され、一人広場の噴水の前で立ち尽くしていた。
少年はため息をつく。
先程から周りの視線が痛かった。顔に大きな傷のある全身黒ずくめの少年が異様に見えたのだろう。
しかしこのコートを脱いでしまえば視線がさらに痛くなるのは明らかだ、少年は被っていたフードをさらに深く被った。
すると、一人の少女が近付いてきた。肩くらいまで伸びた黒髪に大きな目。彼女はどう見てもこの国の人ではなかった。
「あなた、どうしたの?」
少女は心配そうにそう尋ねる。少年の顔については気にしていないようだ、少年はほっとした。
「酒屋に行きたいんですが、場所が分からなくって…」
「そうなの。じゃあ案内してあげる」
少女は笑顔でそう言った。
──少女の案内で酒場につく。数本の酒を受け取り店を出た。
「本当にありがとうございました」
少年が深々と礼を言うと、彼女は困ったように笑った。
「いいのよ、そんな。気にしないで」
「いえ。何かお礼させて下さい」
少年がそう言うと、彼女は少し考えるそぶりを見せてから言った。
「うーん…、じゃあ、私と友達になってくれる?」
彼女は笑顔で少年に左手を差し出す。少年は驚き、そして恐る恐る左手を差し出した。
すると、コートと手袋の間から火傷の痕が見えてしまったようだ、彼女は目を見開いた。
「あなた、どうしたの、ソレ…」
あぁ、終わりだ。
少年はそう思った。普通の人は大抵これを見て気持ち悪がる。
しかし彼女は泣きそうな顔をして少年の左手を力強く握った。
「ひどい、こんな目にあって…」
これは驚いた。
少年はぽつりぽつりと話す。
「戦争で、やられたんです」
「許せない、こんなこと…」
彼女は下を向き、それから顔を上げて少年に笑顔を向けた。
「これからよろしくね!!」
「はい…、はい…!!」
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