Parallel


□夢
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目を開けると、そこは知らない部屋だった。
隣で誰か寝ている。でもそれは教授でもティムでもなかった。

「誰…?」

僕の呟きに彼は起きたようだ、まぶたを擦りながら体を起こす。

「どうしたんですか、ウォーカー」

彼は僕の名を呼んだ。でも僕は彼を知らない。

「あの、あなたは…」

「はぁ?また寝ぼけてるのか、君は」

彼は呆れ顔で僕を見た。


でも、僕、知らない。あなたを知らない。



怯えた僕の様子に気付いたのか、彼は心配そうに僕を見た。

「ウォーカー?まさか本当に私が分からないんですか?」

僕は頷く。
彼は額を押さえてうなだれた。

「記憶喪失か、いや、でも…」

彼はそう呟いた後、顔を上げて僕に優しげな声で尋ねる。



「あなたの名前は分かりますか?」

「アレン・ウォーカー…」

彼はほっとしたような表情をする。でも僕は分からないままだ。

「ここはどこだか分かりますか?」

首を横に振ると、彼はしばらく黙り込んだ後、再び尋ねた。

「じゃあ…、あなたが今自分について分かることを言って下さい」

「僕、僕は教授と暮らしていて、ティムって子供がいて、研究所で教授の助手として働いていて…」



そう言ったとき彼の瞳が曇ったのを、僕は見逃さなかった。









身支度をさせられ、大きな部屋に連れて行かれる。中にはコムイさんがいた。

「コムイさん」

そう言ったとき彼がぎょっとした顔で僕を見た。

「室長は分かるんですか?」

「室長?」

コムイさんが室長?何の?

彼はコムイさんに何か話して、それからコムイさんとこちらに戻ってきた。コムイさんは優しい声で僕に話しかける。



「アレン君、彼が誰だか分かる?」

僕は首を横に振る。

「彼は君の監視役、」

「ハワード・リンクです」

そうコムイさんが言い終わらないうちに彼は自分の名を言った。

「本当に知らない?」

「はい」

「うーん、じゃあ僕の妹は分かる?」

「リナリー、ですよね」

リンクとコムイさんは顔を見合わせて、それからコムイさんは困ったような笑みを見せた。

「君は研究所で働いてるって言ってたらしいね。そこに僕とリナリーはいた?」

「はい。教授の友人として紹介されました」

「その…、教授の名前は分かる?」

「クロス・マリアンです」



教授の名前を言った途端、2人の顔は強張った。リンクに限っては焦ったような表情をしている。

コムイさんは真剣な顔つきで僕の両肩を掴んで言った。



「アレン君、よく聞くんだ。ここは黒の教団という場所で、君はここで暮らしているエクソシストだ。クロス・マリアンは君の師匠で、今は…ここにいない」



僕の頭は余計に混乱した。

教授がいない?
どうして?

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