Parallel
□マフラーのお礼に
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翌日、再びラビは研究所にやって来た。ベルを鳴らすが足音がしない。いつもならアレンが出てくるのだが今回は来る気配さえない。
もう一度ベルを鳴らす。するとこちらに近付く足音が聞こえた。しかしアレンの足音とは違うものだった。
「何の用だ」
ドアを開けたのはクロスだった。髪を一つに束ねて白衣を羽織っている。
「…あー、アレンに昨日の礼を…」
「アイツなら熱出して寝込んでる」
変な意地張るからだ、とクロスはぼやく。しかしラビをじっと見つめてからニヤリと笑った。
「お前、今日も仕事か?」
「いや、今日は非番さ」
「そうか…」
クラスは怪しげな笑みを浮かべながら急にラビの襟首を掴んで中に引き入れた。
「ちょ、何するんさ!?」
「お前に頼みたいことがある。お前にしかできないことだ」
「──俺にしかできないこと、ねぇ…」
ラビは小さな部屋のソファーに座っていた。膝の上にはティム。目の前にあるベッドではアレンが寝ている。
『俺は仕事で忙しい。コイツらの面倒を見てやってくれ』
そうクロスに言われ、この部屋に連れて来られた。
ティムは初めて見た人間に警戒こそしていたが、今は慣れたのかラビに笑顔まで見せるようになった。アレンは熱が高く、苦しそうな表情をしたまま目を覚まさない。
ラビはティムを下ろしてベッドに向かい、アレンの上に乗せたタオルを取り替えた。
「アレンの熱、なかなか下がんないさ。ティム、お前のパパは冷たいなー」
ティムがあまり話せないことは既にクロスから聞いていたが、それでも言葉はティムに通じるはずだ、そう思ったラビはティムに言う。するとティムは少し怒った顔をしてラビのすねを蹴った。
「いてっ、…やったなー!」
ラビはティムを抱きかかえてくるくる体を回す。途端にティムは笑顔になった。
そのとき、ドアをノックする音がしてクロスが入ってきた。何か小さな袋を持っている。
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