名前は「名無し」になっています
連載とはまったく関係ない外科医の話
その日は海軍本部の軍艦と戦い勝利をおさめた夜だった
どんちゃん騒ぎ
そう表すのがもっとも適切だろうと思われるほどハートの海賊団は飲んで食って、宴をあげていた
「おーい名無し!お前も飲めよ!」
仲間の一人に声をかけられたあたしは既に酒が入った体でそっちに足を進める
しかし
途中で何かが足に絡み付いてきた
「…船長、何してんですか」
床にへばりつきながらあたしの足を手で掴んでいたのは間違いなく我が船長
なんの反応もないからもしかしてこれは寝てるのか?と推測したあたしはしゃがんで船長の肩を揺さぶる
「船長、船長、起きてください。寝るなら船室にもどってから寝てください」
「…んぁ?…名無し?」
ちょっとまて誰だこいつ
見た目は間違いなく船長だ
だが頬は赤らみ目じりには薄っすら涙
ぼんやりとあたしを見つめてくるその姿は小動物のようで愛らしい…
って、まてまてまて…第一に、第一にだ。うちの船長が愛らしいっていう時点でありえない。憎たらしいの間違いだ
つまりは今のは疲労によって見えてしまった幻覚
そうだすぐ近くであたしの名前を呼ぶのもすべて幻聴。…幻聴……幻聴………
「おい名無しぃ、どうしたんだぁ?」
頭痛ぇのかぁ?と続ける船長に貴方のせいで痛いですとは言えるわけも無く(そんな事言ったら明日の朝日を拝めない気がする)とりあえず今日はもう寝ましょう、と伝えた
「だったらいっしょに寝ようぜぇ、名無しー」
そういってあたしの腰にヘラリと笑って抱きついてくる
いやいやいや、あたしと船長は恋人同士でもないんだからそんな破廉恥なことは遠慮したい
第一にこの状況も破廉恥だ
顔にどんどん熱が集まるのがわかる。いくら可愛いからって体は普段と変わらなく、その…なんていうか…ちゃんとした男の人の体っていうか
そう意識してしまうと更に恥ずかしくなってきた
そこでニヤニヤ笑ってこっち見てる奴ら…あとで覚えてろ
仲間に一睨みきかせて船長に向き直る
「あのですね、その、そういうことはちょっと無理かなぁ、なんて…」
「駄目かぁ…?」
必殺上目使い
そこでいいです、と即答したのはあたしです
(…ん…朝かぁ)
(よぉ。遅ぇお目覚めだな)
(!!お、おはようございます、船長……って、どこ触ってるんですか!!)
(平らで薄っぺらい胸)
(同じ意味だぁぁぁぁああ!!)