10/31の日記

00:44
官能小説
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智世はバスが来るまで時間が空くと、たいてい本屋で時間を潰す。本のタイトルを見ているだけでも十分楽しめる、10分くらいまでは。それ以上本屋にいると、だんだん気持ち悪くなってくるのだ。多過ぎる活字に酔う、自分の居場所を見失う。

駅の近くにある、ティーンズもレディースもある店(洋服から化粧品まで全て揃っている)で、ガーター柄の付いた黒いストッキング二足と、ローズ柄のベージュストッキング一足(三足買うと単品で買うより安くなる)を買った。
網タイも買えばよかった。店を出て、そう思ったりもしたが、こんな考えはすぐに消された。…焼豚じゃあるまいし。
智世はいつも思う、いつか、網タイの似合う女になりたい。この夢を遠くするも、近くするも、私次第であることなど、とっくにわかっていることなのに。


まだ時間がある。今日も本屋へ行こう。智世はまずコミック売場をひやかし、次に本命の文庫本売場へ向かった。
智世は官能小説を読んだことがない。興味はあるが、どうも気がひける。
だが、最近気になっている作品がある。表紙、タイトル、本屋の紹介文によると、どうやらSM官能小説らしい。
以前ならまわりの目を気にしただろうが、もう今の智世は違う。構わず手にとって、ページをめくってみる。

そろそろバスの時間だ。今日は買わずに、とりあえず棚に戻すことにした。
買う勇気までは出なかった。それに、まだ家に二冊ほど、読んでいない文庫本がある。

昔の智世のままならば、この本をこっそり買ったかもしれない。しかし、今、世界はリアルだ。物語に浸るのは怖くて、不安だから。



☆コメント☆
[カ〜サ] 11-02 22:09 削除
ナンネットから、お邪魔しました。
知的で、非常に興味があります。
応援してますょ

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