□一希様から頂いた14141打キリリク小説「紫煙をたどって」
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 ふかり


 そんな擬音が似合う、独特な匂い。



「生き物みてぇだな」
 それまで大人しく寝入っていると思っていた人物が、何時の間にかその隻眼に己を映し、ついでに何が面白いのか口元に子供のような笑みを浮かべていた。
 ぼんやりと青い空を眺めていた視線を室内に戻し、そのまま先刻から成人男性の頭一つ分の重さに耐えている自分の膝へと移動させる。
「Ha?何が?」
 少しばかり抑揚のない声音で質問を降り注いでやれば、銀色の鬼は軽く片腕を持ち上げて、

「ん、」
「……An?」

 指で示された先―――ふかり、ふかりと一定の速度で立ち昇る煙を吐き出している愛用品を見つめ、これのどこが生き物に視えるのだと鬼を睨みつけてやる。何処からどう見ても、精々『黒い物体』くらいにしか映らない。
「馬鹿、違ぇよ。そっちじゃなくてオマエがぷかぷか吐き出してるほうだ」
「……Smoke?」
「南蛮語は判らねぇが、とにかく煙の方だよ」

 ゆらゆら蠢いて、まるで生きてるみたいじゃねえか。

 ふかり、ふかり

 ゆらゆら  ゆらゆら

「…Hum」
 何か得心がいった――といった具合に頷いてから、「言われてみれば、確かにな」と同情の意を示す。
 本当は、ただ空気の振動で揺らめくだけの薄い煙。
 けれどもそれを煙管ごと空の青にかざしてみれば、まるで、天に昇らんとする白き竜のようで。
「風に揺るぎながらも、唯真っ直ぐに上へと昇っていきやがる………まるで、テメェの様だと思わねぇか?」
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