□一希様から頂いた14141打キリリク小説「紫煙をたどって」
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己の心を見透かしたような鬼の言葉に、思わず寝そべる彼に視線を落として眼を瞠る。その反応に気を良くしたのか、鬼は不敵な笑みを刻んでゆっくりと上半身を起こし、くるりと互いの隻眼を合わせて言った。
「けど気をつけな。あんま上ばっか見てると、下から鬼が竜の尾に喰らいついてくるぜ?」
 自身に満ちた表情をする鬼に、一瞬きょとんと眼を瞬いてから、同じように不敵に笑ってやる。
「Ha!なら精々、気合入れて地獄の底から這い上がってくるんだな。その間、竜はどんどん天に向かって昇って行くぞ?」
「フン、何言ってやがる」

 つい、と伸ばされた鬼の指先が、柔らかく頬に触れてきて、

「こんなにも近くに」

 居るじゃねぇか。

「もう手が届く距離まで、鬼は迫ってきてる」

 ―――精々頑張るのは、テメェの方だろ?


「……クッ、」
 そろりと頬を撫ぜる指先に合わせて、殆ど自然な仕草で喉を震わせた。
 くつくつ、くつくつ。
 何がそんなにも可笑しいのか、正直、自分でも判らなかった。
 ―――ただ。
 これ程までに近くに居る竜と鬼の存在が、余りにも不釣合いで笑いが止まらなかった。
「そうか、そうか。……こりゃあ、うかうかしてられねぇなァ」
 どこか挑発的に、けれども自分自身に言い聞かせるかのような口調で呟けば、鬼も満更ではない表情を浮かべ、愉しそうに喉を鳴らす竜の鱗に己の唇を寄せた。
 寄せられた唇に、竜も漸く音を止める。

「……引っ掴んでやるよ。その内、テメェの尾をな」
 大きく打って出る鬼に対し、竜も負けじとその隻眼に余裕な光を宿らせる。
「出来るモンなら、掴んでみろよ」

 但し、そう簡単には竜は捕まらないぜ?



 そう宣言した竜の横で、紫煙が天に向かい消えていった。



 ―終―
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