フリージア

□02
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02 不思議な奴



…眩しい。

一言で言うと、それしか言えないくらいオーラが輝いている気がする。

なんだろうこの一家は。


「本日はお招き頂きありがとうございます」


母が招き入れているのが跡部先輩の両親である。


その後ろで父親に負けず、ビシッとスーツを着こなしていて、どこからどう見ても高校生には見えないのが跡部景吾である。

そういう結花も動きやすい物をチョイスしたが、淡いピンク色の小花柄のワンピースは結花の魅力を更に引き立てる。


「こんばんは、跡部先輩」
「あぁ、お前も大変だな。食事会なんぞに付き合わされて」
「そんなことないです」
「フッ、そうか」


そうですとも。

私の父と跡部先輩のお父様は昔からの知り合いである。

だから食事会なんてしょっちゅうしているので、慣れというものが生まれてしまったのだ。


「おい、行かねぇのか?」
「あ、行きます!」


そこから少ない人数での食事会が始まる。

話題はいつも同じだ。私達の学校の話や仕事の話。思い出話など色々だ。



***



「ふー」

「なんだ疲れたのか」
「…少しです」


食事をしているところから離れ、ベランダに出て一息吐いていると、後ろから跡部先輩の声がして顔だけ後ろに振り返る。

そしてまた向き直し外を見つめると、私の隣に跡部先輩がトンッと背中をついた。


「おい」
「はい?」
「お前、宍戸とは幼なじみだったな」
「はぁ…そうですけど?」


そう返事をすると、ククッと意味深に笑いをこぼす。


「放課後も暇なんだろう?」


暇?…暇と言えば暇なのかもしれない。家に帰ってもピアノを弾いたり、散歩に出たり…


「暇ですね」


この言葉が正しいのか間違えているのか結花には分からないが、更に満足そうに笑みを浮かべた跡部先輩を見ると「あぁ、間違っていたのかもしれない」と錯覚を起こす。





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