04 哀れな関西人
「ジューンブライダルファッションショー?」
夕食中の出来事だった。
「あぁ。“June bridal fashion show vol.8”」
「今回のショーは、結花に大役をやってほしいの」
もうファッションショーの時期が迫っていたんだ。
ブライダルファッションショーは結花が小学校に入学してから開催されたものである。
毎年5月。モデルがドレスを着て観客にお披露目する。華やかなショーで、6月やそれ以外にも結婚を控えた恋人達が多く訪れている。
「私の大役って?」
そう聞くとお母さんは「まだ秘密よ」と可愛らしく、口元に人差し指を当てる。
「とりあえず、結花に似合う取って置きのをデザインするわ!」
「ありがとう、お母さん」
***
「って話しを昨日したの」
「8年もやってるのか」
「そうなの!日吉君は結婚式ではタキシード着たい?」
「俺は洋風より和風だからな。袴の方がいいんじゃないか」
「似合うと思うけどな。私は憧れるなぁ…純白のウェディングドレス」
昼休みの図書室。広い割には人が少なく会議をするにはちょうどいい。
あっ、一応報道委員調査係の会議中です。
「そろそろ話題を戻してもいいか?」
「あっ、ごめんね」
「いや」
そう言うと日吉君は目の前でパラパラと本を開く。
「ミステリーが好きだって前に言ってたな?」
「うん!」
「じゃあ、この氷帝学園の七不思議的な物を調べたいとは思わないか?」
「……七不思議、的な…?」
「よくあるだろ」
日吉君の言うよくある物は『音楽室の肖像画の目が動く』とか『人体模型が歩き出す』とからしい。
いや、それは…
「それって、ちょっとした恐怖体験なんじゃ」
「立派なミステリーだろ」
ニッと片方の口角を上げた日吉君を見て、ゾッと背中に寒気が走った。
「まっ、調査係として調べてみないわけにはいかないよな」
「日吉君怖い」
「気のせいだろ」
僅かな沈黙が流れるが、数秒後のチャイムがその沈黙を破る。
「…戻ろっか」
「そうだな」