06 夢は大きく
「お前昨日帰れたのか?」
「うん!若が送ってくれた」
「若?」
「うん、若」
はっ?名前呼び?
…結花の奴。昨日までは“日吉君”て呼んでなかったか?仲良くでもなったのか?まあ、それはそれで良いか。
「…おう若」
「宍戸さん、おはようございます」
ガチャッと部室のドアを開けると、既に着替えを終えた若が靴ひもを結び直している。朝練一番乗り常連のコイツなら、いてもおかしくはないよな。
「若、おはよう」
「あぁ、おはよう」
変わった様子は特になし…か。
「亮君!」
「あっ?」
何で真っ赤なんだコイツ?
ワイシャツのボタンに手をかけると、更にあわあわと慌て出す。
「き、着替えるなら言ってよ!」
「…ちょっ…!」
そう言うと自分の鞄を持って、バタンッと奥の部屋に逃げるように入っていった。
「…フッ」
「お前今笑っただろ」
「いえ、別に」
ちくしょー若の奴。口元が緩んでんのがバレバレだぜ。さっさと着替えて壁打ちでもしてくっか。
***
「うわぁ…」
溜まってる溜まってる、目の前の洗濯物が籠2つ分。
今日の朝練は洗濯で潰れちゃうかな。部室も何か汚れてる気がする。ドリンクは作ったし、代わりのタオルも用意してあるし。
「…よし、やりますか」
まず1つ目の籠の洗濯物を一気に掴んで洗濯機に入れていく。
重たい…洗濯って重労働かも。
洗濯機が回ってるうちに、
「お掃除っと」
わぁー砂だらけ。掃除機で吸えるかな?あと、モップと…私、掃除できなそうでできるんです。
***
「おい、結花はどうした」
「結花ならさっき洗濯してたぜ」
「アーン?洗濯だと?まあ朝練に来てるならいい。ジローはどこだ」
「ジローは来てへんで。いつものことやろ」
「チッ…まあいい。今から正レギュラーと準レギュラーはランニングだ!行け!」