07 注意人物
「あっ、また飛んできた」
芝生でバウンドして、コロコロと転がってくるサッカーボール。最近よく飛んでくるな。
「ありがとう」
そしていつも同じ人が受け取りに来る。3年の森下先輩。確かサッカー部キャプテン。クラスメイト曰わく、跡部先輩とは性格が真逆とかなんとか…
「おい、結花。何してんだ」
噂をすればの跡部先輩。
「サッカーボールが…」
「アーン?サッカーボールだと?」
私の言葉に顔をしかめると、サッカーグラウンドにかけていく森下先輩の後ろ姿を、睨むように見つめていた。
「跡部先輩?」
「…なんでもねぇ。戻るぞ」
「? はい」
変なの。
「お前しばらく部活中、コートの外ではなるべく1人になるな」
「何でですか?」
「何でもだ。いいな」
跡部先輩、なんか変だ。何の為に?
***
「森下ぁ?そういや最近やけに絡んでくるぜ」
「やっぱりか」
「あいつがどうかしたのかよ?」
「奴は結花に興味があるみてぇだな」
「なんやねんそれ」
「今はまだ俺の感に過ぎねぇ」
だから様子を見るしかねぇが、あいつに何かあった後ではもう遅い。
「とりあえず結花を守れってことだろ?」
「あいつ、あー見えて抜けてるところあるからな」
「人の恋路を邪魔する趣味はありませんけど、結花が関わってるなら話は別です」
「あぁ、だが今は様子見だ。学校では鳳と日吉に結花を任せる」
帰りは宍戸が送っているようだからいいだろう。
「あのー…もう入ってもいいでしょうか?」
コンコンと奥でノックの音がする。あぁ、すっかり忘れてたぜ。向こう側に声は聞こえないようになってるけどな。
「悪ぃ、忘れてた。帰るぜ」
「忘れないでよー。…じゃあお疲れさまでした!」
頬を膨らましたかと思えば、俺達に笑顔を向けて宍戸と部室を出ていった。
「さっ、これからどうするか」