09 幼なじみ
──カランカラン、
「良江さんの誕生日って今日だったか?」
「そうだよ。忘れたの?」
イチゴのホールケーキが入った箱を揺らさないようにお菓子屋さんから出る。
「忘れてた訳じゃねぇけどよ、あっケーキ落とすなよ」
「大丈夫っ」
もう、子ども扱いするんだから。大丈夫ですよーだ。
「あっ帰ってきた」
「たくっ、ケーキ選ぶのに何十分かかってるんだよ」
「だってチョコレートも美味しそうだったし」
今日は珍しく若と長太郎君も一緒なわけで、2人には外で待っていてもらった。
「若だって、チョコとイチゴなら悩むでしょ?」
それを言った瞬間、亮君と長太郎君が吹き出し、2人ともそっぽを向いて肩を震わせている。
「?」
「ははっ!チョコとイチゴで悩む日吉が見てみたいね」
「鳳、一発殴られたいか」
目尻の涙を拭った長太郎君に、若の表情が引きつった。言わなきゃよかったかな?と少しおかしい気持ちになった。
「お前らやめとけよ」
「宍戸さんも今まで笑ってたじゃないですか」
「そういやよ」
他愛のない会話の中で、ふと亮君が口を開く。
「ん?」
「森下のことは気にするなよ」
「森下先輩?」
あ…、と今日の出来事を思い出して右手で口元を押さえる。それと同時に若が私を庇ってくれたのと、あの表情が頭に浮かぶ。
私、みんなに心配かけてるのかな。
「どうした」
「あ、んん。なんでもないよ」
やっぱり顔に出てるんだ。ダメだな、ほんと。
ふと視線を上げると、いつも通り優しく微笑んでる長太郎君の横に、眉間にシワを寄せている若と目が合った。
「…お前、また俺達に心配かけてると思ってるだろ」
「っ!」
あからさまな態度に溜め息が2つ程耳に届いた。誰のものかは確認しなくてもわかる。
「まあ、心配はかけてるが」
「迷惑じゃないからね」
「そうだぜ。ったく」
亮君が言葉を止めると、ガシガシと私の頭を撫で回した。
「昔っから変わってねーのな」
「おれが結花のこと守ってやる!だから、んな顔すんなよ。なっ!」「なんか、幼なじみっていいね」
「……」
「日吉?」