10 居ない日
「ん?おい、結花はどうした」
「今日は家用で休むって昨日言ってただろ」
「アーン?そうだったか?」
***
「ほらっリズムが乱れてるよ!」
カツカツと何人ものヒールの音と、リズムをとる母の手拍子が大きなリハーサルスタジオに響く。
「先生、気合い入ってるね」
「今回のファッションショーも相当力を入れてるみたいなんです」
普段温厚なお母さんも、このときばかりはいつも別人のよう。そういえば、部活休んじゃって大丈夫だったのかな。
タオルだけは一応用意して置いたけど。ジロー先輩ちゃんと部活来てるかな。あれ、絆創膏補充したっけ…えっと…あ、だめだめ。今はこっちの練習に集中しなきゃ。
「さっ、結花ちゃん。私達も練習再開しよっか」
「はい!」
年に1回のショーだから、中途半端にはしたくないよね。
***
「結花いねーとなんかなぁ」
「なんや岳人。どないしたん」
「何かこう、ぱっとしないっつーか、活気がないっつーか」
結花がマネージャーになってそんなに経ってないけど、いないとなると改めて違和感。
「せやな。ひたすら練習しとるわ」
「ジローはいねーし」
「ジローはランニングの途中に消えたで。またどっかでさぼっとるんやろ。すぐに樺地が連れてくるわ」
結花がいりゃ、ジローの奴いつの間にか練習に参加してるくせに。
「日吉はずーっと走ってるしよ」
何周目だ、あいつ?
「岳人もサボっとるとあっと言う間に、日吉に抜かされてまうで」
「はっ!?んだよ、クソクソ侑士め!なら俺だって走ってやるよ!」
「あーあ、行ってもうたわ。フッ…にしても日吉の奴。まっ、ええか」