11 お誘い
「次はこのXをさっきの答えに置き換えて計算してみろ」
「んー…」
昼休みの図書室。
昨日出ていた数学の宿題をすっかり忘れていた所為で、貴重な昼休みにテキストを広げる。そして一問に引っかかり、にらめっこを始めて5分が経とうとしている。
「そこまではいいが、違う。先にこの式から計算しなきゃ進めないぞ」
「あ、そっか…」
代入するところがイマイチわかんないんだよね。
「…結花お前、頭良くなかったか?」
「この分野の数学は苦手なんだよね」
「苦手分野なんてあるのか」
「そりゃあ私にだって苦手な物の1つや2つくらい…できた!」
「お、どれ?…正解だな」
はぁ、やっと終わった。
「若、どうもありがとう」
「いや、俺はほとんど何もしていない」
「いいの」
素直に「どういたしまして」って言ってくれればいいのに。若らしいけど。
「それより、俺がちょうどここに居たからいいが、居なかったらどうしてたんだ?」
「あっ、全然考えてなかった」
「はっ?」
「若は絶対ここに居ると思ってたから」
“私の感ってやつかな”と笑って言うと、若も小さく鼻で笑った。
「あっいたいた。結花」
「長太郎君?」
「……」
「日吉も居たんだね」
若が手元の本に視線を落とす。
「長太郎君どうかしたの?」
「あっクラス委員が呼んでたよ。手伝って欲しいことがあるみたい」
「えっ?何だろ。とりあえず教室戻るね。呼びに来てくれてありがとう!若もあとでね」
「…あぁ」
机に広げた教科書やテキストを片して足早に図書館を出て行く。
「お邪魔しちゃったかな?」
「バカなこと言うな」
「そんなに即答しなくても」
「フン」
「どこか行くの?」
本を閉じて立ち上がる日吉に声をかける。
「…教室だ」