14 ブライダルショー
「随分とでかいとこやな」
「しかもすっげー行列」
目の前にはでかいドーム状の会場と人人人。その9割は女。結花の母さん主催のブライダルファッションショーの日だ。
「結花から別の入り口聞いてるから、そこから入るぜ」
「おーさすが結花!」
「跡部部長と樺地は?」
「あとで合流するらしいよ。日吉行こう」
「あぁ」
人混みから外れた他の専用口から会場に入る。
***
「お前ら遅ェじゃねーか」
「…なんや跡部。もう来とったんか」
「アーン?当たり前だろーが。なぁ樺地」
「ウス」
周りを見渡せば俺達の他に、どっかのテレビ局の奴らがカメラのセッティングやテストを始めだしている。
「宍戸さん、結花が出るコレってそんなに凄いんですか?」
「そうみてーだぜ。1分でもズレればチケットは手に入らないらしい」
「マジかよ!」
「それは凄いですね」
「あっ居た居た!」
「結花ちゃんだC〜!」
ステージの奥からジャージ姿の結花が駆けだしてきた。
「出てきて大丈夫なのかよ」
「うん。今休憩中なの」
「結花まだドレス着ないのか?」
「この休憩が終わった後に着ます!あと1時間もしないで、お客さん入って来ちゃいますから」
誰から見ても嬉しそうな顔で結花が話す。
「化粧なんかして色っぽいなぁ」
「変な目で見るな忍足」
「久々に言われたでソレ」
「結花、そろそろ準備始めますよ」
「今行きます!それじゃあ」
軽く会釈をして結花はステージ奥に向かう。その横で俺たちに頭を下げる女性。
「宍戸さん、あの人は」
「結花の母ちゃん」
「うっそ!わかっ!」
***
「あんだけの人数が入るとやっぱすげーのな」
向日さんが言うように、さっき外にいた全員が中に入ったら、いくらでかいこの会場でも満席になる。間違ったらチケットが取れないって宍戸さんも言ってたしな。
なのに男の俺達が一番正面を陣取っていいんだろうか。
「うおっ!」
突然会場全体の明かりが落ちて、それと同時に観客から割れんばかりの歓声が沸き起こる。
「スゲースゲー!」
芥川さんが興奮する中、沢山のライトが会場中をはじけだし、モデルの人達が次々とステージに現れる。
「きゃー!結花ちゃーん!」
「えっ結花どれ!?」
「一番前にいるだろーが」
「マジで?」
「まるで別人やな…」
「……」
「日吉、口開いてる」
確かに別人だ。いつもの結花の人懐っこい愛らしい笑顔は変わらない物の、ドレスを身に纏っているお陰で雰囲気が別人。同い年ってよりまず高校生には見えないだろ。
「結花ちゃんかわE〜!」
俺たちの前に来ると更に笑顔を見せて、手を振りながら通り過ぎていく。
あいつが楽しみにしていた理由がわかる。
…似合いすぎだろ。
「予想以上やな」
「なっ」
何故。どうして。忍足さんは俺の肩に手を乗せる。一瞬心臓がドキッと跳ねた。
「忍足さん。やめてください」
「そないな照れなくてもええやないか」
肘で押してくるあたりが、かなり面倒くさい。
「なんだ日吉。結花見て照れてんのか」
「向日さんうるさいです」
何なんだこの人達は。
「来たぞ」
パッと顔を向けると、今度は違うドレスを来た結花が前を通り過ぎる。
「結花ちゃ〜ん!」
「ジロー身を乗り出すな」
「A〜!」
「ほんま可愛ぇわ、なぁ日吉」
「……」
誰かこの人から解放してくれ。