01
「ケホッゴホッゴホッ」
「柚依大丈夫?風邪引いたの?」
「あっ香奈…。うん、ちょっとね」
「次体育だよ?しかも柚依は800M!出るの?」
「うん。体育大会でやるあたしの種目だもん。ちゃんと走らなきゃ」
「そう…?無理しないでね」
「ん、ありがと」
──正直…ホントはすごく体がだるい。でも、保健室で見てるのは嫌。
しかも今日は男子も外…
陸上部として走りたい。
あと、あの人に…
───田島君に…
あたしの走ってるところ見てほしいんだ。それがホントの理由…
「はーい!始めるよ!みんな並んでー!」
担任の指示で、グラウンドに散らばっていた9組の生徒全員が集まった。
「まず最初は100M、次は400Mやるよ!そのあとは800Mね!選手は準備しておいて」
先生はそう言うと100Mの選手を連れて、みんなのもとを離れていった。
「はあ…」
あたしはグラウンドから少し離れた芝生のところで、体のだるさと体温に重い溜め息をついた。
「どーした柚依!元気ねえぞ!」
「っ!あ、田島君」
後ろからいきなり声がして少し肩を震わせると、そこにはニカッといつもの明るい笑みを浮かべた田島君がいて、あたしの顔には熱とは違う暖かさが集まった。
その田島君の横には、首に腕をかけられている三橋君がいた。
「柚依800Mだろ?頑張れよ!」
「う、うん!ありがと」
「田島ーっ!先生、呼んでんぞ!」
「おぅ泉!今行くっ!ンじゃな柚依!三橋行くぞ」
「あ、う、うん」
そう言って2人はグラウンドに駆けて行った。
「ん、くしゅんっ。──っはあ…大丈夫かな…」
***
「ねえ、田島、君」
「んあ?」
「柚依、ちゃん。顔、赤かった、ね」
「えっそうだったか?」
「う、うん」
──今日そんなに暑くないと思うんだけどな?