01
「千代ちゃーん!」
昼休み、花井と部活のことで喋ってたら、数人しかいなかった7組に綺麗な声が響いた。
その声に呼ばれた篠岡は笑顔でその子に駆け寄る。
オレはそれを自然と目で追って行った。
「数学の教科書忘れちゃったんだ。貸してもらっていい?」
「いいよ!ちょっと待ってて」
「ゴメンね」
その子の名前は柚依…
篠岡の中学のときからの親友らしくて、いつも休み時間にはうちの教室に来て、篠岡と楽しそうに喋ったら、自分の教室に帰って行く。
オレはそれを何回も見ていた。
この頃は野球部にも顔を出すようになって、オレ達と自然に仲良くなった。
彼女を見るたびに胸がグッと苦しくなる。
オレは初めて柚依を見たときから…
「はい、柚依」
「ありがと千代ちゃん!あっそうだ、今日も野球部観に行っていい?」
「うん、いいよ!──…君、見たいんでしょ?」
「ち、千代ちゃんっ!」
え…?──誰?
よく聞こえなかったけど、何で柚依はそんなに顔を赤くしているの?
「──…谷…おい、水谷聞いてんのかー?」
「あ…悪い花井」
ボーっとしていたオレは花井に声をかけられて我に返った。
「じゃ、あたし戻るね。教科書ありがと!後で返しにくるね」
「うん!」
柚依は篠岡に微笑んで手を振ると廊下をかけていってしまった。
柚依好きな人いるの?
野球部に…