01
「わあー!祭り祭り!柚依早く!」
「ちょ、ちょっと待ってよ悠一郎!あたし浴衣だから走れないの!」
今日は夏祭り。
半袖短パンでいる悠一郎と違ってあたしは浴衣。あんまりはしゃげないし、やっぱり普通の格好で来ればよかったかな…
「柚依ー!射的っ」
「うん!」
射的台の前で満面な笑みを浮かべて、あたしに向かって手を振っている。
「柚依、何か欲しいのある?」
「ん〜…あっ、じゃああのウサギ!」
「あれね!よーし…」
───パンッ
ボト
「はい!」
「ありがと!」
悠一郎は“へへん”と鼻の下を人差し指で擦ると、あたしにウサギのぬいぐるみを渡してくれた。
すごい、一発で取っちゃった。
「あ、柚依!次、あっち行こ!」
そう言うと悠一郎は駆け出して行く。
「え、ちょっ」
チクッ
「っ!」
悠一郎を追いかけようとして足の向きを変えたときに、履き慣れない固いサンダルの所為か、踵の部分が靴擦れをしてしまった。
前を見ても人混みの所為で悠一郎の姿は見えない。
「どうしよう」
あたしは仕方なく人混みの少ないところに出て丁度あった階段に座り、鞄の中にあった絆創膏を踵に貼った。
「悠一郎…」
あたしは夜の暗さと独りぼっちに何だか心細くなって膝を抱えた。
──♪〜♪〜〜
突然聴こえた携帯の着信音。
画面には愛しいあの人の名前。