01
──バイバイ文貴、あたしのこと忘れないでよね!「柚依…」
オレは駅前の空を見上げながら、懐かしい幼なじみのキミの名前を呟いた。
柚依がそう言ったのは、中学3年に上がる前の冬のこと。
大好きだった柚依…
でもその言葉を伝える前に柚依は神奈川に引っ越してしまった。
埼玉から遠いわけではない。でも、小さいときから一緒にいた柚依がオレの傍から離れていく。
それが辛くて、悲しくて
オレは見送りにも行かずに部屋で1人泣いていたことだけ覚えてる。
──あたしは野球をする文貴が好きだよ!電車に揺られながら頭に浮かんできた柚依のこの言葉が
まるで最近のことのような気がする。
柚依の笑った顔、泣いた顔。今、その全てが愛しく感じる。
そして今、オレは柚依に逢いに行く。
だから、
キミに逢ったらまず“好き”と伝えたい。
そのあと柚依はどんな顔をするんだろう…?
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