01
「あ!」
「どうしたー?水谷」
部活終わりに、グラウンドを出ようとしたときだった。
「教室にイヤホン忘れてきた」
いつもの様に音楽を聴こうと思って、鞄からウォークマンを出すと、肝心のイヤホンがない。
「取ってくれば?俺達玄関前で待ってるからさ」
「おお、サンキュー!」
そう言って俺達は自転車を学校まで走らせた。学校に着き玄関前に自転車を止めると、栄口達を待たせて教室まで駆けていった。
イヤホン忘れるとか有り得ねー!
──ガラ
教室に入ると今は夕方で、全体がオレンジ色に染まっていた。だけどその中に、1人の女子が机に顔を窓側に向けて眠っていた。
「柚依?」
何してるんだ?
そう思って、教室に入り黒板を見ると日直の下に彼女の名前が。
今日、日直だったっけ。
突然だけどオレ、実は柚依が好きだったりするんだよな。優しいところとか、真面目なところとか…
因みに今は席が隣同士。
「えーっとイヤホン、イヤホン」
寝ている彼女を横に、静かに椅子を引いた。
「あった」
机の奥に手を伸ばすと、コードの様なものが指先に引っ掛かった。
ゴンッ
「いって!」
イヤホンを引っ張り出して、立ち上がろうとしたら、机の角に額をぶつけた。これ、地味に痛かったりする。
「ん…」
ヤベッ、柚依起きちゃったか。そう思って柚依を見ると、目は閉じたまま顔がオレの方に向いていた。
「セーフ…」
溜め息を吐きながら椅子を戻し、鞄の中からウォークマンを出してイヤホンを差し込んだ。
「…き…」