03 小さいのは見た目
「あれっ向日先輩、ランニングは?」
「とっくに終わったぜ。ウォームアップだからな」
で、なにしてたんだよ?と言われ数分前のことを思い出す。
「洗剤?」
「届かなくて…」
「んなもん俺がとってやるよ!」
「えっ?」
自信満々に言う向日先輩を、ぱちくりと見つめてしまった。
「…今お前、届くんですか?って思っただろ」
「あ、ははは」
…図星である。
でも私の方が小さいのだから向日先輩のことは言えないのです。
目の前でムスッとしている向日先輩に「お願いします」と言うと、ニッと笑って軽々とジャンプして洗剤の箱を取ってくれた。
「ほらよ」
「ありがとうございます!」
へへんと鼻をかいて、今度は意地悪く笑うとガシッと結花の首に腕を回した。
「クソクソ結花!俺を小さいと思うな!」
「きゃー!すいません!ごめんなさい!」
笑い声が混じりながら戯れる。楽しいがちょっと苦しいです、向日先輩。
「む、向日先輩、そろそろギブアップです」
ぺちぺちと腕を叩くと「あぁ、わりぃ」と首から腕を解いてくれた。
「じゃあ頑張れよ!」
そう言って、ぽんっと私の頭を叩いて向日先輩は部室を出て行った。
「私の頭叩く人多いなぁ……あっ!洗濯!」
洗濯を始めようとしてからもう30分も経過していた。
流石に見つかったら跡部先輩に怒られてしまう。
「うわっ、亮君の泥だらけ」
小さな文句をこぼしながらも洗濯物詰め込み、テキパキと作業をして、洗濯機のスイッチを入れると部室を出た。